恐怖のバキバキ音…車が水没、数十メートルえぐられた川岸 埼玉の記録的大雨、橋も冠水 逃げる人々
12日夜、県西部を中心に降った記録的な大雨で、ときがわ町では、土砂崩れで複数の住宅が傾くなど被害があった。住民らは「山からバキバキと音がした」と恐怖の様子を話した。鳩山町では、家屋が浸水したほか、川の水で護岸が数十メートルにわたりえぐられたり、車が水没するなどした。
ときがわ町関堀、ブラジル出身のジュリアナ・クリスピムさん(42)宅には、裏山から土砂が流れ込んできた。「雨が強くなってきて、窓を開けたらお隣の人が避難する姿を見た。山の方からバキバキという音がして、山が崩れてきそうだと思い、消防に連絡した」と振り返る。町内の友人の家に、ペットを抱いて近所の人と共に避難したという。
庭には土砂が堆積し、自宅のドアは開閉不能に。荷物を持ち出すこともできない。着の身着のままに出てきたため、生活に必要な物品が手元にないと戸惑う。同所に住んで6年目。「静かな場所で、みんな優しい。2年前に畑を始めてもっと幸せを感じるようになった。この地でまた暮らしたい」と話した。
同所は、70軒ほどの一戸建てが並ぶ、町内でも規模の大きい住宅団地。学校や町の施設に避難していた住民らは13日朝、住宅地内の自宅に戻ったが、今度はガスの供給が止められており困惑していた。
同町玉川の段ボール箱を製造する新和産業埼玉工場では、倉庫にあった完成品が水に浸った。2019年秋の東日本台風では浸水被害はなかった。広瀬一男工場長は「気になっていたが朝、出勤してきて驚いた。一段低い倉庫の中が30~40センチも浸水していた。幸い工場の方は被害はなかった」と話していた。
同町馬場の中村ストアー都幾川店では、店内が浸水したほか、店舗裏側の基礎部分が崩れた。店舗内は昨夜、従業員が排水作業をしたが「見たこともない水の量ではき切れなかった」(中村茂社長)という。一夜開け、店舗裏側の基礎が崩れたのは「想定外で、営業再開はしばらくかかるかもしれない」と話した。
鳩山町赤沼では1級河川鳩川の水があふれ、県道に架かる重郎橋が冠水した。橋のフェンスなどには流木などが引っかかり、下流の護岸は数十メートルにわたりえぐられ、大きな岩が露出していた。周辺の民家では浸水被害が続出した。
70代の男性は、大雨と川の水量を見て「夜6時半ごろ、早めに避難した。朝、家に戻って驚いた。家は床上浸水、近くにあった勤務先のプレハブは基礎のコンクリートとも見事に流されていた。近所に住む90代の女性が『こんなに水が出たのは初めて』と話していた」と明かした。