大学院を首席で卒業 憲法テーマに修士論文 埼玉・久喜の76歳、宿屋さん 「毎日が新発見で楽しかった。あっという間」
久喜市の宿屋恒恭(しくやつねやす)さん(76)が、加須市の平成国際大学大学院法学研究科を首席で卒業した。修士論文は「米国の新聞にみる日本の軍事的役割拡大と憲法」。指導した坂本健蔵法学部教授(56)は「米国の5大新聞を的確に分析している」と高い評価をした。
宿屋さんは富山県出身。国立の富山工業高等専門学校機械工学科を卒業後、上尾市にある日産ディーゼル工業(現UDトラックス)に入社。トラックのエンジンの研究開発や車両開発などの技術者として定年まで勤め、定年後は都内の特許庁関連の一般財団法人工業所有権協力センターで特許審査を手がけている。
「長年自動車関係の技術者として働いてきたが、別の分野のことを学んでみたくなって、平成国際大学大学院法学研究科で2年間、政治・行政を専攻した。日本国憲法をテーマに、米国有力新聞5紙に記載された1990年代から2010年代以降の社説を合計98件抽出した」と話す。
日本国憲法は、大前提に、「平和憲法」、「米国によって作られた」、「制定以来まったく改正されていない」との共通認識があることがわかった。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナル、ロサンゼルス・タイムズ、シカゴ・トリビューンの新聞5紙。違いも見えた。
「ニューヨーク・タイムズが他の4紙と大きく異なり、1990年代以降日本の軍事的役割拡大および憲法改正ないし再解釈に批判的だった。他の4紙は日本の軍事的役割拡大に関しては肯定的ないし歓迎する姿勢があった。憲法改正ないし再解釈に関してはロサンゼルス・タイムズは姿勢が不鮮明だったが、他の3紙は肯定的ないし歓迎する姿勢だった」と分析した。
大学での2年間を振り返って、「毎日が新発見で、楽しかった。あっという間に終わった感じ。卒業後も大学の図書館に来て学びたい」とも。在学中は、国会議事堂近くの国会図書館にも25回ほど通った。「図書館で勉強する環境が好きなんです」と話した。
坂本教授は「宿屋さんは向学心が豊か。英語がすごく得意で、英語の文献にしっかりと目を通し、分析している。学生たちのいい刺激になっている」と紹介していた。