埼玉新聞

 

浦和レッズ守護神・西川が大記録 J1通算無失点試合170に更新、プロ生活19年目 感動エピソードも

  • 11月のカタール・ワールドカップ出場を目指す西川。右はミレッGKコーチ=2月2日、金武町フットボールセンター

 浦和の守護神が大きな勲章を手に入れた。GK西川周作は、10日のホームFC東京戦で得点を許さず、J1通算無失点試合を歴代1位となる170に更新した。前人未到の大記録を達成した西川が本紙の取材に応じ「皆が喜んでくれたことが一番うれしかった」と西川らしい感想で笑顔を見せた。チームメート、ファン・サポーターら誰からも愛される背番号1は、まだまだゴールを守り抜く。

 プロ生活19年目。日本を代表するGKの西川。元鹿島の曽ケ端が持っていた記録を抜き「ほっとしたというのが正直な気持ち」と、肩の力を抜いた。思うような結果が残せていないチームで、主将として個人記録に意識を回す余裕はなかった。それでも、周囲の期待を受け「自分の背中にプレッシャーを感じていた」と、どこかに重圧があったことを漏らした。

 「170」の記録には、これまでのプロ生活が凝縮されている。「いろんな監督、コーチ、選手たちと戦ってきた。自分の財産と時間が含まれている」。過去から現在まで一緒にゴールを守ってきた仲間たちの顔を思い浮かべ、数字の重みをかみ締めた。

 浦和に在籍して9年目。気付けば最古参選手となった。浦和はJリーグで最高峰の愛と厳しさが共存するクラブ。「このエンブレムを着けるからには、最後まで戦い抜かなくてはならない」。ファン・サポーターを「仲間」と呼び、喜びと悔しさを共有するために全力を尽くす。

 浦和には今季、ミレッGKコーチが新任。キャンプ時には「いい刺激をもらっている」と出会いに目を輝かさせた。GK鈴木ら若手の台頭にも「集中しなければ、いつ入れ替わってもおかしくない」と、緊張感をプレーに生かす。

 西川の代名詞と言えば「周作スマイル」と呼ばれる笑顔だ。原点はアルゼンチンにある。10代のころ訪れたアルゼンチンで、当時同代表だったGKアボンダンシエリのファンを大切にする姿に衝撃を受けた。「一瞬でこういう選手になりたい」と志すように。誰にでも分け隔てなく接する様は、このころ培われ今も変わらない。

 記録を達成した当日は、家族がスタジアムを訪れた。「家ではサッカーの話をしない。けがをしても痛がる姿を見せていない」と話す。それでも、試合後に2人の娘から「パパおめでとう」と伝えられたという西川の顔は、いつも以上にくしゃくしゃになったはずだ。

 チームの飛躍とともに西川には目標がある。日本代表に復帰し11月のカタール・ワールドカップに出場することだ。「チームが上位にいればアピールになる」と高いモチベーションとする。無失点試合記録を伸ばし続けることで道を開く。「諦めていないです」と言い切った言葉には、確かな自信があった。

■誰にでも優しい先輩

 西川の人柄を物語るエピソードがある。4月2日の札幌戦。試合後、取材エリアに一番最初に姿を現した西川だが、取材を終えても帰ろうとしなかった。しばらくすると、札幌のFW中島がやってきた。西川は「あれは止まれなかったよな」と、優しく中島の丸刈りの頭をなでた。

 試合中に中島と交錯した西川は珍しく怒りをあらわにした。それでもピッチを離れれば誰にでも優しい先輩。「しっかりプレーした結果。思いっきりやっていいよ」と伝えた。西川の言葉に若手のホープの目は少し輝いていたように見えた。

■西川周作(にしかわ・しゅうさく)

 2005年に大分の下部組織から大分に昇格。広島を経て14年から浦和に加入した。Jリーグベストイレブン5度受賞。J1リーグ通算543試合出場。日本代表31試合出場。大分県宇佐市出身。36歳。

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