ウニクス秩父、待望映画館オープンへ 29年映画館なかった秩父 全市民の倍以上の来場者数を見込んだ理由
秩父地域に待望の映画館が復活する。ユナイテッドシネマ「ウニクス秩父」が29日、秩父市上野町にオープンする。同地域は過去に計12カ所の映画館施設が存在したが、1970年代から相次ぎ閉館。93年に当時あった映画館が営業を終えてから29年間、映画館はなかった。「映画館が欲しい」との地元住民の要望を受け、秩父市は2019年から映画館の誘致活動を推進。人口減少が続く地域での新規事業展開は集客力が大きな課題となるが、市は運営会社と連携を図りながら、映画館を中心に新たな地域経済活性化を目指す。
ユナイテッドシネマは、ウニクスなどの商業施設を開発するピーアンドディコンサルティング(さいたま市大宮区)と、複合映画館を運営するユナイテッド・シネマ(東京都品川区)が共同で開業。09年に営業を開始したショッピングセンター「ウニクス秩父」に、敷地面積約8600平方メートルの映画館施設を増築し、7スクリーン(約650席)の劇場を完成させた。
ピーアンドディコンサルティングによると、ウニクス秩父が買い物客を対象に実施しているアンケート調査で、「映画館が欲しい」という投稿が毎年多数寄せられている。また、市産業支援課によると、17、18年に開催した市長と高校生の意見交換の場でも、映画館や劇場を望む意見が目立った。
市は19年6月に工場誘致条例を一部改正するなど、映画館の誘致活動を積極的に推進。映画館の建設決定後は、市のイメージキャラクター「ポテくまくん」とコラボしたグッズや、秩父地域の映画館の歴史をつづったノートなどを作製し、秩父地域の子どもたちを中心に広く周知している。
ピーアンドディコンサルティングは、同シネマの来場者数を年間約13万人と見込む。秩父市の7月1日時点の総人口は約6万人。全市民が来場しても目標来場数に達しないが、同社開発事業本部の山本喬さん(43)は「秩父郡市と東秩父村の計約10万人を商圏に定めている。年間1人当たりの入場回数を1・3~1・5回と見込むほか、秩父とゆかりのある映画作品なども上映し、観光客にも楽しんでもらいたい」と説明する。
また、映画鑑賞後に買い物をしたり、買い物ついでに映画を見たりといった相乗効果も期待する。ウニクス秩父のテナント数は現在24店舗で、リピーターを含めた年間利用客数は約200万人。29日にオープンする映画館施設の1階には、アミューズメント施設と衣料品専門店が備わり、買い物の幅が広がる。
山本さんは「秩父地域の商圏人口を考えると、映画館施設を単独で開業するのは難しいが、既存のショッピングセンターの売り上げ向上を図ることで、運営を維持できる。秩父市が積極的に進めている広域商業施設誘導の力になり、市と共に地域経済活性化を目指したい」と話していた。