埼玉新聞

 

見たことない…珍しい植物か?県環境アドバイザーがときめき さいたまの池で“イヌタヌキモ”発見 絶滅とされ、その後存在が確認された希少な水草 「環境保全を伝える学習に」と意気込みも

  • イヌタヌキモの標本を手にする橋本健一さん

    イヌタヌキモの標本を手にする橋本健一さん=2日、さいたま市中央区の大日本ダイヤコンサルタント関東支社

  • イヌタヌキモの標本を手にする橋本健一さん
  • イヌタヌキモの花(橋本健一さん提供)

 埼玉県環境アドバイザーで、子どもへの環境学習に取り組む橋本健一さん(52)=さいたま市=が、同市緑区の池で希少な水草イヌタヌキモを発見し、今月2日に論文がインターネットで発表された。黄色の花を咲かせる食虫植物で、県レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。橋本さんは「希少種は(その場所の)シンボルになる。自然環境の保全を伝える環境学習に生かしたい」と意気込む。

■ムジナモに似ている

 2023年5月、環境学習に適した場所を探していたところ、緑区の池で見たことのない植物を発見した。「ぽつぽつとした物があり、ムジナモに似ていた。珍しい植物かもしれないとときめいた」と橋本さんは振り返る。

 論文や図鑑で調べ、同年8月に水面上に咲いていた黄色の花などを手がかりに、イヌタヌキモにたどり着いた。24年春、水草に詳しい国立科学博物館の学芸員にも確認を取り、同館に標本が登録・収蔵された。

 イヌタヌキモは県レッドデータブック2011で絶滅とされたが、その後、加須低地などで存在が確認され、今年3月に公表された24年版では「絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)」に指定されている。

 今回の発見をまとめた橋本さんの論文は、県立川の博物館(寄居町)が発行する「紀要(第25号)」に掲載された。同じ池でスイレンやコイなどの外来種も確認されており、「外来種の増加に伴い、希少種が姿を消す可能性がある」として保全対策についても触れている。論文は川の博物館のホームページで閲覧できる。

■子どもに伝える

 橋本さんはさいたま市出身。現在は大日本ダイヤコンサルタント(東京都)で、自然や生物環境を守りながら橋や道路など社会基盤をつくる景観デザインの仕事をしている。その傍らで「地元のために何かしたい」と、23年からさいたま市内などで、水辺の生態系や自然環境の保全を子どもに伝える環境学習にも取り組む。

 川や池に入ることを最初はためらっていた子が、最後はびしょぬれになって楽しむ姿を目にするといい、橋本さんは「夢中になることが大事。川や魚を好きになると『地域の自然を守ろう』という気持ちにつながる。実際に水の中に入ることで外来種の多さに気付くこともできる」と語る。

 イヌタヌキモのような希少種は、保全の重要性を伝える好例となるため、今後は現地での環境学習も検討中だ。橋本さんは「さいたま市内は子どもが遊べる水辺が少ない。今後、楽しく遊びながら学べる安全な水辺づくりにも取り組んでいきたい」とさらなる意欲を示している。

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