<新型コロナ>10人に1人感染の埼玉県民、累計73万人超で クレームなど医療機関疲弊…HP混雑で停止
県内の新型コロナウイルス感染者は7月末、累計73万人を越え、統計上、県民のおよそ10人に1人が感染したことになった。新規感染者が連日のように1万人を超える急拡大は医療機関に大きなひずみをもたらしている。救急現場では、絶え間ない外来患者と救急搬送に疲労の影を濃くしている。
7月23日午後4時、川越市の川越救急クリニックが開院すると、院内はたちまち息つく暇もないほどの忙しさになった。受診の事前連絡や来院した患者の自家用車などでの問診、救急車の受け入れ要請などの電話。職員は絶え間なく対応に追われた。
発熱患者の対応は1日40組までとしているが、診察などに時間がかかり、午後11時ごろまで発熱外来を閉められないことも。上原淳院長は「上限人数に達して受診できない患者からのクレーム対応もあり、正直疲弊している」と表情を曇らせた。
県内ではクラスター(感染者集団)が発生した医療機関などの入院患者を含めると、今月3日時点で入院中の感染者は1591人。即応病床への入院は1177人で使用率は7割を超えている。
県は発熱外来の負担軽減のため、症状のある人に検査キットを配布。発熱外来を訪れなくても自宅で確定診断が受けられるよう、全国の医療機関からなる「ファストドクター」や23の診療・検査医療機関でのオンライン診療や、検査結果と身分証の写真の送付で確定できる確定診断登録窓口を設置した。
しかし、ファストドクターの県民用診断フォームは、混雑のため一時停止しているとの画面が表示されることなどが多く、受け皿不足が続いている。上原院長は「キットを配布しても陽性なら確定診断を受けに来るので、医療機関の状況は変わらないのでは」と疑問を示す。
逼迫(ひっぱく)は発熱外来だけではない。主に中等症までの救急患者を受け入れる同クリニックには、発熱症状を呈する患者を受け入れる病院が少ない中、特に夜間に救急患者が集中する。上原院長は対応に追われて睡眠時間が十分に取れない日も多いという。
7月31日までの1週間で、救急隊が医療機関に4回以上照会をかけ30分以上現場に滞在した「救急搬送困難事案」は前年同期比で約200%増加した。県消防課は「最近の暑さによる熱中症など複合的な要因がある」としつつ、「新規陽性者の増加と比例して困難事案も増加している」と話す。
川越救急クリニックでも開院すると同時に救急搬送の受け入れを求める電話が入った。上原院長は「(救急車は)みんな行く場所がないんだよ」とつぶやきながら、受け入れ用意を進めた。