埼玉新聞

 

埼玉の話題パン店、閉店へ…あす10日、95年の歴史に幕 パンでできた籠に、小さなパンを詰め込んだ“パンバスケット”有名 近くに桜の絶景名所も 手頃な値段、用意していたパンは60種類

  • 「パンバスケット」を手にするオーロール東城屋の新谷晥さん(左)、芳枝さん夫妻=7日午後、幸手市中

    「パンバスケット」を手にするオーロール東城屋の新谷晥さん(左)、芳枝さん夫妻=7日午後、幸手市中

  • 「パンバスケット」を手にするオーロール東城屋の新谷晥さん(左)、芳枝さん夫妻=7日午後、幸手市中
  • 老舗パン店「オーロール東城屋」の外観=幸手市中

 幸手市中の老舗パン店「オーロール東城屋」が10日、閉店する。新谷晥(あきら)さん(84)、芳枝さん(80)夫妻が中心となって焼きたてのパンを提供してきたが、体力の限界と設備の老朽化などから、創業100年を前に廃業を決めた。地域の食を支えてきた「まちのパン屋さん」が姿を消すことになり、なじみ客から惜しむ声が上がっている。

 オーロール東城屋は1930(昭和5)年、晥さんの父親の春五郎さんがパン職人として修業を積み、日光街道沿いの現店舗近くにオープンした。当時はあんパンやジャムパンといった定番商品のみ扱っていたが、焼きたてパンブームに乗り、現在は約60種類を販売。中でもパンで作った籠の中に小さなパンを詰め込んだ「パンバスケット」は、さまざまなメディアに取り上げられ話題を呼んだ。

 売れ行きを見ながら焼きたてのパンを随時補充するため、人手が必要になる。長男(54)と2人のパート従業員も手伝っているが、引退する晥さん夫妻の穴を埋めるのは難しい。設備の老朽化や原材料の高騰も重なり、さまざまな事情を考慮して決断した。

 晥さんは「父親と一緒にパンを作り、亡くなって店を引き継いで約50年。親、子、孫の3代にわたって通ってくれているお客さんもいる。自分の代で閉めるのは本音では寂しい」と胸の内を明かす。

 当初は3月末での閉店を考えていた。しかし、4月に入ると市内の権現堂公園を訪れる花見客も来店する。「毎年遠くから来てくれて、顔を覚えているお客さんも多い。だから、桜が終わるまでは頑張ろうと思って」と芳枝さん。

 地元住民にとっても欠かせない存在だ。市内の主婦(62)は「総菜パンが好きで、昼ご飯によく利用している。値段も手頃で、これからも頑張ってほしいと思っていたから、閉店はとても残念」と語る。

 パンを作り続けて95年。新谷さん夫妻は「おいしいパンを作ることだけを考えてずっと営業してきた。その思いは最後まで変わらないので、ぜひ来店してほしい」と呼びかけている。

 オーロール東城屋の営業時間は午前9時~午後7時。問い合わせは同店(電話0480・42・0530)へ。
 

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