ふるさと納税で特殊詐欺を撃退?! 返礼品で「防犯通話録音機」設置 川越、市外者の利用で市内の親族宅に
川越署や川越市などは8月から地元企業と連携し、ふるさと納税の返礼品として特殊詐欺の対策に有効な「防犯通話録音機」の設置サービスを開始した。市外在住者がふるさと納税として2万6千円を市に寄付すると、市内に住む親族らの固定電話に録音機が設置される仕組み。川越署によると、ふるさと納税を活用した特殊詐欺対策は県内初で、全国的にも珍しい。税金と一緒に安心安全の気持ちを納めてもらう取り組みだ。
「安心感がある」。防犯通話録音機を設置した塚本知行さん(74)、牧子さん(72)夫妻は口をそろえる。4~5年前に「保険金が戻る」と詐欺の電話がかかってきたことがあったが、その際は詐欺と気付き警察に通報したため、被害を免れた。今回、離れて暮らす息子が高齢の両親を心配し、ふるさと納税に寄付、録音機を設置することに。牧子さんは「電話をかけた不審者も“うっ”と思うのでは」と期待を寄せる。
録音機は家庭の固定電話に取り付け可能。着信があると「この通話は防犯のため録音しています」などと音声が流れ、自動的に通話を録音する。詐欺グループは通話が証拠として残ることを嫌がるという。
不動産業などを営む地元の「三光物産」が設置し、訪問時に防犯指導も行う。同社の木所裕幸代表取締役社長は「詐欺被害を1件でも多く減らすことで、住みやすい川越市にしたい」と意気込む。
市は「防犯指導も合わせて実施することで、より市民の不安解消につながる取り組みになる。川越市に住む家族の安心、安全を思っていただき、ふるさと納税を活用してほしい」と呼びかけるものの、申込件数は多くない。川越署は、キャンペーンやチラシの配布で周知。市はホームページなどで情報発信し利用者の増加を目指す。
川越署によると、川越市内で今年発生した特殊詐欺被害件数は2日時点で23件(前年比12件減)。被害額は約4281万円に上る。また、今月1日までに同市内で515件の予兆電話を認知しており、県内ではさいたま市に次いで2番目に多い。
県警特殊詐欺対策室によると、特殊詐欺の約9割は固定電話にかかってきた電話から始まる。川越署の森田真一生活安全課長は「被害を防ぐために防犯通話録音機を設置することは有効な手段。この取り組みを普及させ(詐欺の)手口も多くの人に知ってもらえれば」と力を込めた。