埼玉新聞

 

3年前にも土砂崩れ…台風、大雪を懸念「冬までに県道復旧を」 秩父・中津川 生活道路残るも危険多く

  • 中津川の住民に防犯講話を行う、秩父署の鈴木勇気巡査長(中央)=16日午後1時ごろ、秩父市中津川の中津川集会所

 土砂崩れで県道が寸断された埼玉県秩父市中津川地区の住民が16日、地元の集会所に集まり、土砂崩れ発生時の状況などを語り合った。15日に停電が解消されたものの、県道復旧の見通しは立っていない。住民らは「地域で団結しながら、今の状況を乗り越えていきたい」と笑顔を見せる一方、地区内外を結ぶ唯一の生活道路となっている金山志賀坂線が台風や大雪で通行不能になる事態を懸念し、「冬までに県道が通れるようにしてほしい」と訴えた。

 13日午前6時半ごろに発生した土砂崩れは、秩父市街と中津川地区をつなぐ県道中津川三峰口停車場線をふさぎ、集落2地区(中津川、中双里)の住民計15人らの生活に影響を与えている。

 山中みゆきさん(69)は「いきなり停電になり、驚いた。テレビなどで情報確認ができなかったので、しばらく何が起きたか分からなかった」と、振り返る。中津川地区の住民たちは停電発生後、すぐに同集会所に集まり、山中新一区長(64)指示の下、仲間の安否確認や情報収集を行った。

 同地区内は、2019年の台風19号時も甚大な土砂崩れに見舞われていたが、山中区長は「台風19号の時は電気が通っていたので、電話で安否が確認でき、心配事はそれほどなかった。今回は停電がしばらく続いたため、住民の不安は大きかった」と語る。

 土砂崩れ発生と同時に市内で約80軒が停電し、一部地域で携帯電話が不通になった。市職員らは、電力と電話が完全復旧する15日まで、発電機や衛星携帯電話などを搬入し、電力確保に努めた。

 「夜は真っ暗になり、危険な猛獣が襲ってくる可能性もある。女性は特に不安を感じてしまう」と山中区長。電力復旧までの間、住民は自宅の食材を持ち寄って集会所に避難したため、食料難に陥ることはなかった。

 同地区最年長の関口きえ子さん(87)は「今は、市や診療所の方々が、林道(金山志賀坂線)を使って訪問に来るので、生活に大きな支障はない。私たちは普段から坂道を上り、体力に自信があるので、心配しなくても大丈夫」と元気に語った。

 住民たちの一番の不安は、今後の台風や大雪被害。現在、唯一の生活道路となっている金山志賀坂線が災害などで寸断されてしまうと、孤立の危険性が高まる。住民たちは「この地域は、冬の寒さが格別なので、積雪で道がふさがれると、暖房器具の燃料不足や食料難に陥る。何とか冬までに、県道が通れるようにしてほしい」と願っている。

■秩父署員「地域の安全見守る」 出動の管理道「一般の人が通るのは危険」

 秩父署大滝駐在所の鈴木勇気巡査長(38)が16日、中津川地区を巡回。住宅や施設を訪問し、「災害が発生すると、住民を狙った犯罪が多くのなるので気を付けてほしい」と声がけをして、地域の安全を見守った。

 市職員や警察官らは現在、同地区内にある森林管理道「金山志賀坂線」を通り、集落地区の見守りや支援活動を行っている。秩父署員は、定期的に中津川地区の連絡派出所に立ち寄り、16日午後1時ごろに訪れた中津川集会所では集まった地域住民8人に対し、「今後、災害に便乗して、犯罪者が潜入する可能性がある。詐欺などに遭わないように注意してほしい」などと注意喚起した。

 土砂崩れ発生時、秩父署員6人は、同管理道を抜けて中津川地区に出動。住民の安否確認後、宿泊施設利用者や登山者らを誘導して域外へ避難させた。鈴木巡査長は「管理道は台風19号(2019年)で受けた崩落跡が現在も残っているので、緊急時以外、一般車が通るのは危険」と話す。

 同管理道は現在、通行許可を得た緊急車両や支援車両のみが通行できるが、鈴木巡査長は「災害ボランティア目的などで、一般の方が無断通行してしまう恐れがある。今後も巡回を強める必要がある」と語った

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