「ちょっと大変。でも楽しい」ウクライナの19歳、自立へ一歩 さいたまでアルバイト、学業に奮闘
ロシアによるウクライナ侵攻で、さいたま市内に避難しているアナスタシア・オシペンコさん(19)が、8月中旬から市内でアルバイトを始めた。戦争の開始から半年が経過し、終わりが見えない中、1人暮らしも始めている。日本語で「ちょっと大変」と言いながら、自立に向けて新たな一歩を踏み出した。
オシペンコさんは現在、「北辰商事」(桜区)が運営するディスカウントストア「ロヂャース浦和店」で、週3回勤務している。納品された生活雑貨品を棚に補充するなどの仕事を主に担当。通訳アプリを通した質問に対し、「ちょっと大変。でも楽しい。みんなとても優しいです」と日本語で答えた。市内の日本語学校に通いながら、母国の大学のオンライン授業を受けて、アルバイトをこなしている。電車内で勉強することもあり、「時間が全然ありません」と困った顔を見せた。
2月24日のロシア侵攻後、母親らと隣国のポーランドに避難した。支援サイトを利用して、さいたま市内のホームステイ先を自分で見つけ、5月に避難してきた。アルバイトを始めた直後からは、市から提供を受けた市営住宅で、1人暮らしをしている。父親はウクライナ、母親と弟は英国に避難して、家族は別々に暮らしている。
オシペンコさんは「時々寂しい。毎日、(電話で)家族と話します」。戦争が続いている現在の心境を問うと、日本語で伝えるのは難しいとして、スマホの通訳アプリで、「早く終息してほしい。日本はいい。ご支援ありがとうございます」と答えた。
埼玉大学工学部3年の外山玲音さん(21)らが教育担当を務める。同世代ということで指名された外山さんは「こんな身近に戦争を感じるんだと思った」と振り返る。英語は大学受験までで、主に通訳アプリを介して会話している。パート勤務の同僚らもサポートしてくれており、「日本語がどんどんできるようになっている。自立心、責任感が強い。コミュニケーション能力も高く、彼女から雑談をしてくれる。彼女の成長を見守りながら、みんなで楽しく仕事をしている」と語った。
同社は4月、ウクライナ避難民への生活一時金や支援物資など1千万円相当を市に寄贈した。同社で働くウクライナ避難民はオシペンコさんだけだが、受け入れる用意はあるという。同店の津久井誠店長(45)は「言葉が通じなくて、苦労していると思うが、彼女は前向きで、楽しそうに仕事をしている。本人が働きたいと思っている間は、会社として仕事を用意してサポートを続けていきたい」と話していた。