セブン店員「すみません」…振り込みボタンを押そうとした客の指を阻止 客の電話に店員出ると慌てた詐欺師
県警武南署(門井幸夫署長)は特殊詐欺被害を未然に防止したとして、川口市内のコンビニエンスストア店長と郵便局員に感謝状を贈った。コンビニ店に勤めて12年の衛藤和也店長(28)は「うちの店から詐欺被害を出さない覚悟です」と語り、郵便局員の兼平弘一さん(34)は「客を見守る気遣いが詐欺被害を救えたと思う」と話した。
■恥忍び声かける
6月13日午後4時過ぎ、同市安行原のセブンイレブン川口青果市場入口店で、店内ATMの前で携帯電話で誰かと話す男性に、衛藤さんは「どうしました?」と声をかけた。男性は「電話料金のことで…」と言う。
衛藤さんは詐欺被害だと直感した。「ちょっとすみません」と言って手を差し出してATMの操作盤の振り込み決定の最後のボタンを押そうとしていた男性の指を止めた。男性から携帯電話を借りて衛藤さんが電話に出ると、相手は慌てた様子で電話を切った。
「客を守るのが店の役目。私が間違っていたとしても、謝れば済む話。とにかくストップです」と衛藤さん。「ATMで電話する人には、恥を忍んで誰でも声をかける。全国のコンビニで声かけすれば、被害は相当防げると思う」と話す。
■キーワード一致
兼平さんは同市桜町の鳩ケ谷桜町郵便局の課長代理。6月29日と8月5日、「金を引き出したい」と来局した高齢女性に声をかけ、女性の話の内容から詐欺被害を見破り、ホットラインで武南署員を呼び被害を防止した。
6月の高齢女性は「息子から『会社でミスした。会社が半分出すから残り100万円を出して』と言われた」と話した。武南署から通知があった「詐欺被害を疑うキーワード」がぴたり一致した。
8月は還付金があるとだまして500万円を振り込ませようとしたケース。高齢女性は犯人から「5時15分に郵便局でATM操作を」と指定されたが、ATM操作が不安だった女性は局員がまだ仕事中の早めの4時50分に来局した。これが幸いした。「閉店後の5時過ぎだったら、私たちも気付かないので止められなかった」と兼平さん。
「お客さんの気分を害さないように話し、警察が来るまで時間を稼ぐことも大切です」と篠原洋之局長(48)は言う。