埼玉新聞

 

花園アウトレット来月オープン、隣の「深谷テラス」人気 テーマは“野菜”、スーパーにない魅力の数々

  • 複合施設周辺には約6千平方メートルの野菜農園が広がる

  • 「個性豊かな野菜の魅力を知ってほしい」と話す店長の松村佳代さん。農園長も兼任する=「深谷テレス ヤサイな仲間たちファーム」

 5月に深谷市黒田にオープンした農業体験型施設「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」が家族連れらに人気を集めている。体験農園やマルシェ、レストラン、料理教室を備えた食品大手キユーピー(本社・東京都渋谷区)の複合施設で、作り手、売り手、買い手の三方が交流する「顔の見える農園」が売りだ。企画立案した店長の松村佳代さん(44)は「コンセプトは『野菜にときめく、好きになる。みんなの笑顔を育むファーム』。お客さんの笑顔が一番です」と野菜愛にあふれている。

■社員が企画提案、店長に

 秩父連山が見渡せる青空の下、緑の農園が広がる。マルシェやレストラン、食育施設が入る山小屋風の建物はガラスを多用し、レストランから農園が一望できる。敷地面積は約1万7600平方メートル。

 同ファームは、2012年にキユーピーが実施した新規事業プラン社内公募に松村さんが応募、案が採用されたことで誕生した。当時、同社の総菜工場に勤務していた松村さんは「もっと楽しい野菜の食べ方や、野菜の種類をお客さんに知ってもらいたい」と野菜園付きの複合施設を立案。深谷市が農業と観光の振興を目的に進める「花園インターチェンジ(IC)拠点整備プロジェクト」と連動し、10年を経て願いが実現した。

 松村さんが求めたのは消費者や生産者とダイレクトに交流できる場だ。「工場勤務ではお客さんの反応が見られない。直接コミュニケーションを取りながら『おいしかったよ』『また来たよ』などと、お客さんの笑顔が見れる場をつくりたかった」と話す。

■学んで買う

 農園には30種類以上、年間100種類ほどの野菜を栽培する。収穫体験ではスタッフが個性豊かな野菜の”持ち味”を丁寧に教えてくれる。レストランで取れたての野菜を味わうことも可能だ。マルシェには地元の新鮮野菜のほか、全国各地から取り寄せた珍しい品々も並ぶ。地元の農家が直接店内を訪れ、お客さんとコミュニケーションを取りながら野菜を売ることも。スーパーでは見られない光景だ。

 市内から小学生の長女と来園した30代の女性は「ナスにもいろいろな種類や色、形があるんですね。料理の作り方も教えてもらえる。学びながら買えるのが楽しい」。川越市から夫婦で訪れた60代の女性は「のどかな風景に気持ちが落ち着く。スーパーにはない野菜もあるし、作り手、売り手との距離が近いのがいいですね」とほほ笑んだ。

■相乗効果

 開園から約4カ月を経過し、リピーターも増えた。ファームを運営する深谷ベジタブルコミュニケーションの海老沢智幸社長は「大勢の人にお越しいただき感謝している。松村さんは馬力とパワーがある。お客さんや農家の方の笑顔を通して40人ほどのスタッフがやりがいを持って働いてくれている。それが何より」と笑顔の相乗効果を指摘する。

 ファームは花園ICや秩父鉄道ふかや花園駅から近く、市の観光拠点施設「深谷テラスパーク」に隣接。10月には隣に県北部初のアウトレットモールが開業し、集客の相乗効果も期待できそうだ。

 なじみの農家やリピーターから「まっちゃん」の愛称で親しまれている松村さんは、野菜ソムリエ上級プロの資格を持つ。「生産者や消費者の皆さんと一緒に笑顔のベジタブルパークを育んでいきたい。新型コロナウイルスの状況を見ながら、今後は自分の野菜料理レシピも紹介していきたい」と柔和な顔をほころばせた。

ツイート シェア シェア