長瀞出身ピアニスト・乙益乃衣さん、秩父屈指の大ホールで演奏へ 夢追って渡米、地元に格別な思い
秩父市熊木町の秩父宮記念市民会館大ホールフォレスタで10月9日、ピアノトリオコンサート「THE GOLDEN SONORITY OF ROMANTIC ERA」が開催される。主役の一人、ピアニストの乙益乃衣(おとますのい)さん(32)は、秩父地域屈指の大ホールで演奏できる日を、心待ちにしている。「地元での演奏は格別な思いがある。子どもの時から私を知ってくれている方たちに、最高のステージで感謝の気持ちを伝えたい」と意気込みを語る。
乙益さんは長瀞町出身。3歳からピアノを始め、町立長瀞第一小学校と長瀞中学校を卒業後、音楽家を目指して都内の高校、大学に進んだ。23歳で米国に留学し、6年間ピアノを追求。「海外ではコミュニケーションが上手く取れずに苦労したが、各奏者の思いが違っていても、ステージに上がると一瞬で一体感が生まれる。それが音楽の力なのだと実感した」。
2019年に帰国した乙益さんは、都内を中心にコンサートを展開。同年7月には母校の長瀞第一小で講演会を開き、「夢を追えば、自分を変えることができる」と、児童に伝えた。慣れ親しんだ同校体育館のステージで生演奏も披露し、これまでの成長の証しを、かつての恩師たちに届けた。
コロナ禍で公演中止が相次ぎ、オーケストラやオペラの仲間たちは無力感に包まれていた。楽譜編集などの個々の仕事は入ったが、みんなとステージで演奏する機会は激減してしまい、音楽家ができることは意外と限られてしまっているのだと、乙益さんは痛感した。
同市民会館は、秩父出身のオペラ団「ちちぶオペラ」のサポートでたびたび出演した思い出のホール。今回は主役としての初ステージで、公演に懸ける思いは一層強い。当日は、大学時代に知り合ったバイオリニストの佐藤久成さん、チェリストの谷口賢記さんと共に、ロマン派のクラシック作曲家メンデルスゾーンらの楽曲を演奏する。
「室内楽(少人数編成の重奏)は、奏者それぞれの個性や創造性を聴衆一人一人に届けることができる。私たちの音のコミュニケーションを、たくさんの人に楽しんでほしい」と、乙益さんは来場を呼びかけている。
コンサートは午後2時開演で、入場料3千円。チケット購入は池田さん(電話090・1425・4021)へ。