いつも遊んでくれる人の正体は…劇場と地域の多彩なつながり方を紹介 首都圏の芸術監督がさいたまでトーク
首都圏にある公共劇場の芸術監督がその役割や制度の課題を語り合うイベント「公開トークシリーズ」の第2弾が、さいたま市中央区の彩の国さいたま芸術劇場で開かれた。同劇場の近藤良平さん、世田谷パブリックシアター(東京都)の白井晃さん、神奈川芸術劇場(横浜市)の長塚圭史さん、そしてゲストに富士見市民文化会館キラリ☆ふじみから白神ももこさんの4人の芸術監督が集まり、「公共劇場と地域性を考える」をテーマに、劇場と地域をつなぐための取り組みや苦労話を紹介した。
同じ「公共劇場」といっても、県立、区立、市立と規模や成り立ちによって取り組みは異なる。人口約11万人の富士見市にあるキラリ☆ふじみでは地元に寄り添った活動を展開しており、白神さんは「月1回、芸術監督と子どもが遊ぶ企画を開催している。劇場に子どもが行く習慣ができて、『いつも遊んでくれる人は何をする人?』と興味を持ち、公演を見る流れができた」と述べた。対して、人口約923万人の神奈川県。オンラインで参加した長塚さんは、人も多く、さらに劇場のある横浜市中区は県の東端に位置しているため西部への広報が難しいと説明。県民に親しみを持ってもらおうと、「西遊記」の一行が県内を巡る演劇ツアーなどを実施しているといい、「劇場を出て、外とつながるよう意識している」と力を込めた。
4月から彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督に就任した近藤さんは「さいたまスーパーアリーナは知っていても『芸術劇場を知らない』という人が多い」。今夏、埼玉の新しい盆踊り「さいさい盆踊り」を創作、地元の祭りに参加して盛り上がった経験から、「新参者が地域に溶け込んだ。相互関係がつくれるんだと気付かされた」と手応えを語った。白井さんは「昔は拠点志向だったけれど、今は、自分たちが出ていって劇場文化を発信しなくてはいけないと思うように。けれども都市の中にある劇場は、人々が分散するだけに難しい面もある」と分析した。
埼玉や東京など関東の1都6県に点在する劇場同士の連携を提案した近藤さんは「埼玉のまだ行ってない所もそうだが、作品を持って神奈川にも行きたい。自分の地域を超えた部分で交流していけたら」と抱負を語った。
芸術監督が語るイベントの第1弾は4月、世田谷パブリックシアターで開催。白井さん、近藤さんら5人が集まって議論した。今後も各劇場で開催する予定だ。