埼玉新聞

 

批判コメントあふれ、笑う同性婚の男性「僕らは幸せ」 11人に1人がLGBTQ、左利きと同じ比率

  • 自宅で過ごす佐藤潤さん(左)と内田直紀さん=川口市

 2017年に男性同士で結婚式を挙げた会社員の佐藤潤さん(40)と内田直紀さん(32)=川口市在住=の2人は、いまだ法的に認められてはいない関係だが、式から5年がたった今も当たり前の生活を築いている。LGBTQ(性的少数者など)に対するネガティブな話題が続き、当事者や支援者の活動も活発化が見られる一方、佐藤さんは「叫べば叫ぶほど理解を得られなくなる場合もある」と指摘する。「僕らは不幸じゃない。幸せな日々を続けている」と語る。

 「紙(婚姻届)にできないのなら周りの承認を得たいという気持ちだったが、記憶として焼き付く楽しい式になった」。神奈川県葉山町で挙げた結婚式は2人にとってかけがえのない思い出の一つだ。毎年の旅行では、式の翌年に閉鎖してしまった式場の前で写真を撮るのが恒例行事になっている。

 式はさまざまなメディアに取り上げられ、インターネット上には批判的なコメントも多かったという。佐藤さんは「他人の幸せが許せない人のねたみ」と笑う。今年7月に施行された性自認や性的指向による不当な差別を禁じる「県性の多様性を尊重した社会づくり条例」では、パブリックコメントの募集時点から交流サイト(SNS)に批判的なコメントがあふれ、「相変わらずと思った」と率直に話す。

 自治体がパートナーシップ宣誓制度を導入するなど環境整備は肯定的に受け止めるが、「アクティビスト(活動家)への不信感がある」と考えを語る。「叫べば叫ぶほど理解を得られなくなる場合もある。民間と行政、当事者の三位一体でやっていく必要がある」と強調する。LGBTQの割合は約11人に1人で、左利きの人の比率と同じともいわれる。佐藤さんらも「当たり前にいる人」として過ごしてきた。「悲しいとか同情を引くのでなく、僕らは幸せなので、そこを訴求したい」と思いを語った。

 結婚式から5年、交際を始めてからは10年たつ。「結婚は一つの山。男女カップルならその後に出産などの山があるけれど…」と今後の生活に思いをはせる。最近2人はフグを飼い始めた。マンションのリビングにたくさんの水槽を並べ、餌を与えようとすると手のひらサイズのフグが水面に寄ってくる。「この子たちは小さな山かな」

 週末は2人で出かけ、お互いの家族との付き合いもある。お互いを見つめる中で、たまにけんかもする。同性同士でも男女のカップルと何ら変わらない家族の形がある。「『不幸です、不幸です』と言っていったら暗示のように本当に不幸になってしまう気がする。僕らは不幸じゃない。ちゃんと幸せな日々を続けている」と静かに訴えた。

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