すでに校舎は解体も…小中一貫校計画「手のひら返し」 越谷、3校中2校の業者選定で議会否決 開校遅れも
越谷市初となる小中一貫校の整備事業が大きく揺れている。市議会9月定例会で建設と維持管理に関する業者選定を巡り、否決されたことが要因だ。来年7月ごろに着工し、2026年度の新校開校を想定した同市の計画は、大幅な見直しを迫られることになった。開校遅れは避けられそうになく、保護者らは「不安。学びの機会を止めることだけは避けてほしい」と訴えている。
■反対22、賛成9
同市教育委員会は、同市内の人口急増地域周辺の学校再編を検討し、20年に三つの小中一貫校を開設する方針を決めた。そのうち「蒲生学園」「川柳学園」(いずれも仮称)の2校の整備事業について入札。民間の経営ノウハウや資金を活用する社会資本整備(PFI)方式を採用し、応札した2グループのうち同市内の設備工事会社「ナカノヤ」グループが、6月に約142億円で落札した。
しかし、PFI選定審査会委員の人数が規定「5人以内」とされる中で3人にとどまる点や、価格と性能評価の配点割合が委員によって「3対7」から「2対8」に変更された点など、議会で「選定が不透明」と異論が出た。委員会、本会議とも採決の結果、賛成9、反対22で否決された。
■戸惑いの現場
議会で否決された翌日9月29日午前8時ごろ、再編予定の蒲生小学校では、日常の登校風景が広がっていた。しかし既存校舎の解体工事は数カ月前から始まっており、建物の大部分がシートで覆われていた。
保護者らも突然の方向転換に戸惑いを隠せない。来年、蒲生小学校に入学予定の園児を持つ20代女性は「不安だが、この場所に住んでいる限り、この学校に通わざるを得ない。学校ができないのは困る」と困惑。児童を送迎途中の40代女性は「学校から正式に聞いてないので何とも言えない」としながらも「子どもたちの学びを止めることだけは避けてほしい」と注文する。
■再編計画に影響も
一方で、落札したナカノヤグループは10月4日に会見を開き「ルールに準じて適正に行ってきたのに、落札した途端に手のひらを返したようにルールに異議を唱え否決された。誰にどんなメリットがあるのか」と、ナカノヤの小林孝裕社長は不信感をあらわにした。
着地点は見つかるのか。市学校教育部は「当初の開校予定がずれ込むのは間違いない。まずは児童生徒の気持ち、そして保護者や地元自治会の期待に対してもきちんと説明したい」と対応に頭を悩ませる。
万が一、業者選定の見直しとなると、開校はどんなに早くても1~2年遅れる見込み。当該の小中学校の再編計画にも影響を及ぼす可能性がある。
同市の福田晃市長は否決を受け「否決となったことは誠に残念。今後は、児童生徒の学校生活への影響を最優先に考えて事業を進めていきたい」とコメントした。