埼玉新聞

 

感動「お抹茶蒸しパン」販売へ 心身障害の人ら働くパン工房、地元お茶屋とコラボ お金で買えない絆新たに

  • お抹茶蒸しパンの試作品(スマイラ松原提供)

  • パン工房で須藤所長(右)と武田さん(右から3人目)=蕨市のスマイラ松原

 蕨市錦町で心身障害の人たちが働くパン工房「スマイラ松原」が、駅前通り商店街のお茶屋「萩原商店」と協働で開発に取り組んだ「お抹茶蒸しパン」が完成し、11月3日の文化の日に売り出すため仕上げに取り組んでいる。作業所の仲間たちは「売れるかな」と期待を膨らませている。

 「所内で次の商品企画を話しあって、商店街に呼びかけてコラボできたら素晴らしいということになった。から揚げ屋さん、ナポリタンの喫茶店とか、うちのパンと組み合わせたらどうか、いろいろ考えた」と須藤由美所長(55)。

 担当職員の武田美帆さん(35)は「初めて電話した先がお茶の萩原商店さん。電話に出た女性の専務さんが『うちを選んでくれてうれしい』と言ってくれた」と振り返る。私たちは地域で生きていくために、地域の手助けが必要。私たちも地域に貢献したいと思っている。そんな思いに共感してくれて『うれしい』と言ってくれた。感動しました」と振り返る。

 声掛けが6月、7月に基本は完成した。「作っては萩原商店に持って行き、甘いね、もうちょっとだね、などとアドバイスをもらい、何度も作りなおした」と武田さん。

 「私も試食でもうダメと言うほどたくさん食べた。このプロジェクトで私たちはお茶屋さんに文化を教わり、いろいろ学んだ。お金では買えない、貴重なつながりができた」と須藤所長は言う。

 「うちは4月に店を改修したばかりだった。奥を日本茶が主役のカフェにした。だれでも気軽に入れる。車いすトイレも作って、バリアフリーにした。そういうところにスマイラさんから声がかかった」と萩原商店専務の中村美枝さん(55)。

 カフェは「ティー・ファーム」。店長は、改修を機に「私も手伝う」と東京の会社を辞めて実家に帰った娘の弐千華さん(21)。売り物はお茶の葉に客が自分で急須からお湯を注ぐ日本茶と商店街の和菓子店の菓子のセット。カフェの片隅にお湯の釜も置いた。

 中村さんは「地元の商店を指名してくれてありがたかった。武田さんがとっても熱心で何度も来てくれた。作っては持ってきて『食べてください』ってね」と話した。

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