早世した息子への思い歌に…元熊谷高校教員の歌集出版 志半ばで昨年死去、妻が形に 金子兜太氏との縁も
東松山市在住の石川尚子さんが、昨年6月に亡くなった夫の石川勝利さん(享年79)の第2歌集「青年眠る」(いりの舎)を出版した。タイトルは二十数年前、大学生の次男(大助さん)が北海道の大雪山で亡くなった際、俳人・金子兜太氏(1919~2018年)から勝利さんが頂いた「白雪に 青年眠る 月日かな」の句から付けた。第1歌集「白雪に」(同)と同様、息子を思う心情がにじみ出ている。
勝利さんは同市出身。東京教育大学を卒業後、高校教師となり、2002年、県立与野高校校長で定年退職した。短歌を始めたのは次男が亡くなった1996年から。92年、兜太氏の母校・県立熊谷高校に赴任後、創立百周年記念事業の事務局を担当、兜太氏に甚大な協力を受けた。これが縁で、次男の墓碑への揮毫(きごう)を手紙で依頼すると「白雪に 青年眠る 月日かな」「白雪に 青年眠り 父母と遠し」の句とともに「大悲」の文字を寄せていただいたという。
勝利さんは、次男の七回忌に第1歌集「白雪に」を出版。第2、第3歌集は「青年眠る」「月日かな」と決めていたが、昨年6月に亡くなった。その後、尚子さんが資料を整理していたら、押し入れから「風の音」と題する短歌500首、パソコンに第2歌集として2057首が残されていた。
生前、短歌仲間に「第2歌集を出すと」と言っていたことも分かった。「このまま埋もれさせてはならない」と決意。勝利さんも歌舞伎見物で何度か訪れたゆかりの小鹿野町の湯宿に泊まり込み、膨大な詠草を削りに削って「600首ほどを選び、(短歌仲間の協力で)何とか形にすることができた」と振り返る。
第2歌集(204ページ、2750円)は、次男への哀悼と贖罪(しょくざい)の気持ちを歌った「青年眠る」、少しずつ体調が悪化、亡くなるまでの「最後の日々のうた」、勝利さんの人生を豊かににした学び、趣味、ふるさと、親・兄弟姉妹、家族などを詠んだ「わが人生」などで構成されている。
問い合わせは、いりの舎(電話03・6413・8426)へ。