埼玉新聞

 

「全国最下位」脱出へ…埼玉医大、群馬大と協定 「地域枠」学生への支援拡充、合同実習や共同学習も

  • 協定書に署名を交わした埼玉医科大学の別所正美学長(右から2人目)、群馬大学の石崎泰樹学長(左から2人目)=4日、さいたま市大宮区

 埼玉医科大学(別所正美学長)と群馬大学(石崎泰樹学長)などは4日、県境の埼玉県北地域を中心とする医師不足などの解消を目指し医療人材養成事業に関する協定を締結した。協定の期間は7年間で、医師不足の地域や診療科で一定期間勤務すれば奨学金返還が免除される「地域枠」学生への教育やキャリア支援体制を拡充する。さらに、両大学の学生が地域医療に関する映像教材や合同演習を行い、地域医療への理解を深める。

 事業は文科省の「ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業」に選ばれた。

 埼玉県は人口10万人当たりの医師数が全国最下位で、特に医師不足が深刻な県北や利根(加須市など)、秩父医療圏では群馬県の医療機関を頼る患者が多い。また、両県の医療機関には互いの県出身者が多く働いているなどの事情もあり、埼玉医科大学の担当者は「互いの地域医療の現状についての教育は双方にとって重要」と話す。

 同日、さいたま市大宮区のソニックシティビルで協定締結式が開かれ、両大学の学長や、埼玉、群馬県や両県の医師会、埼玉県立大学、埼玉県7病院、群馬県6病院の計20者が署名した。20者の代表者からなり、事業の方針を決定する「埼玉・群馬未来医療人育成連携推進会議」は年に一回開催され、初回は同日の締結式の後、開かれた。

 両大学では協定に基づき、1年生が両県の現状を映像教材で学び、演習や発表を行う学習と、合同で県境地域の医療機関での見学実習を行った後、オンラインで共有する「利根川プログラム」の2種類の共同学習を行う。さらに埼玉医科大学は、今後の地域で必要とされる総合診療などを地域枠学生が学ぶ講義や、ポストコロナ時代に対応する感染症実習を新設するなど、カリキュラム開発や拡充を行う。開発した教材は県立大学の看護学生や県外大学の県出身医学部生による活用も見込んでいる。また来年3月には群馬大学とシンポジウムを開き事業の成果を報告するという。

 埼玉医科大学の別所学長は締結式で、「年間19人の地域枠学生が入学しており、地域で活躍している卒業生も多い。地域枠学生がハブ(中心)となり、地域でさらに活躍することを期待している」とした上、「義務年限だけ努めればよいということではなく、地域に愛着を持って末永く貢献するマインドを育むことを目指したい」と意気込んだ。

 今回の協定で、地域枠の卒業生が決められた期間の後も医師不足の地域や診療科にとどまり、地域医療の担い手となれるのか、注目が集まる。

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