埼玉新聞

 

「大変だけど、楽しい」専門業者が指導、レベルアップへ 障害者が市役所トイレ清掃 志木、雇用改善に期待

  • 専門業者の指導を受けながらトイレ清掃に取り組む障害者就労継続支援B型事業所の利用者=9月29日、志木市役所

 「大変だけど、やりがいはあります」「悪戦苦闘しながらやっています」―。7月に竣工(しゅんこう)した志木市役所の新庁舎で、市内の障害者らがトイレ掃除に奮闘している。障害者の雇用の場を広げようと、庁舎の管理運営を委託された会社が8月から導入した。障害者らは専門業者の指導を受けながら、業務に取り組んでおり、市側は「さまざまな人と関わり、清掃技術が向上して工賃が上がれば、みんなが暮らしやすくなる」と障害者の雇用環境の改善に期待を寄せている。

■作業に没頭

 9月29日午前10時。志木市庁舎3階西側トイレ前に洗剤やブラシ、ホルダーなどを持った市社会福祉協議会の就労支援事業所の利用者3人と同職員2人、市内の清掃業者が集合。3人は業者らの指導でトイレの天井や壁、床を清掃後、個室の便器などの汚れ落としと除菌作業を行った。

 3人は2時間かけて、庁舎1階から3階の西側にある男女と多機能トイレを清掃。没頭して作業に取り組んだ小峯良栄さん(58)は「公園の清掃はやったことはあるが、これは慣れてないんです」と額の汗を拭った。阿部博美さん(52)は「大変だけど、楽しい」とほほ笑んだ。

 庁舎で障害者が実施するトイレ清掃は1階から3階の西側のトイレだけ。いずれも雇用契約を結ばない福祉サービスで、就労継続支援B型の三つの事業所が庁舎の清掃請負業者の依頼で知的や精神疾患の障害者を派遣。事業所ごとに曜日を決めて実施している。

■専門業者が提案

 きっかけは、市内でビルメンテナンスと清掃事業に取り組む専門会社「村田商会」社長の村田敬吾さんの提案だった。市地域自立支援協議会の委員を務める村田さんが宮崎県を訪れた際、障害者が庁舎のトイレ掃除をしていることに感動。「障害者に仕事を提供したい」と委託業者に打診した。

 市共生社会推進課によると、B型事業所の作業工賃は、作業の発注元が委託契約料として支払い、その一部を工賃として支給する。2020年度の埼玉県のB型事業所の平均工賃は月額約1万4千円。週5日の就労で1カ月に23日間作業したとしても、1日の工賃はわずか約600円だ。

 同課は「専門業者の指導を受ければ、本人の能力も向上しレベルが上がる。トイレはきれいで使いやすいと評価されれば、本人も誇りを持って力を発揮できる。将来的に『ぜひ障害者にお願いしたい』と思われれば、雇用が広がり、工賃もアップされる」と話している。

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