埼玉新聞

 

ネコに込めたメッセージ マスコットや小物販売 バングラデシュのノクシカタ刺繍展、13日までさいたま

  • 小銭入れやネコのマスコットなどノクシカタ刺繍による作品

  • ノクシカタ刺繍の展示販売で現地の女性を支援している馬上美恵子さん(右)と夫の慎司さん=8日午前、さいたま市浦和区岸町4丁目の「楽風」

 「バングラデシュ・平和をつむぐノクシカタ刺繍(ししゅう)展」が13日まで、さいたま市浦和区岸町4丁目の日本茶喫茶・ギャラリー「楽風(らふ)」で開催されている。現地の女性を支援している一般社団法人「フェアトレード・ロシュン」(東京)の主催。収益は大洪水や新型コロナウイルスの影響を受けた現地の人たちの支援に充てられる。

 同法人理事の馬上美恵子さん(66)=東京都東村山市=は1983年から3年間、JICAの青年海外協力隊員として、バングラデシュに派遣された。同じく派遣された夫で代表理事の慎司さん(68)と知り合い結婚。夫妻は二人三脚で約40年、現地の女性の自立支援を続けてきた。

 保育園の栄養士だった美恵子さんはインドの国境に近いジェソール県に配属され、農村で栄養指導を担当した。「健康な体をつくるために、牛乳や卵を食べましょう」と女性たちに伝えても、買うお金のない現実に直面する。「落ち込んだときに、出合ったのがノクシカタ刺繍だった」

 ベンガル語でノクシはデザイン、カタは布を意味し、千年以上前から受け継がれてきた伝統的な刺繍。着古した服から切り抜いた布を重ね合わせて縫っていくもので、赤ちゃんのおくるみや枕カバーなどで利用され、もったいないやもてなしの気持ちが込められてるという。美恵子さんは「女性の自立の道につなげられると思った」と振り返る。

 現地の女性たちを理解しようと、美恵子さんは刺繍を教えてもらいながら、伝統的な技法やデザインの方法などを広め、女性の経済的な自立を支えた。これまでに約500人の女性たちが刺繍を学び、スタッフ8人が現地の工房を運営している。持続可能な取り組みとするために、女性のリーダーたちも育てた。

 美恵子さんは「最初は『どうしよう』と話していた女性たちが、『こうしよう』と意識を変化させた」。女性たちには得た収入をどのように使うかも提案。男性優位の社会は根強く残っているものの、慎司さんは「妻が収入を得ることで、男性の意識も変わっていった」と感じたという。

 展示販売作品は、ショルダーバッグ、クッション、小銭入れ、ネコのマスコット、衣服、ソファ掛けなど200点以上。デザインにはメッセージが込められ、魚は魔除けや家庭繁栄、マンゴーは豊かな実り、ネコは徳を得られることを意味する。平和への願いを込めた作品も数多い。

 コロナ禍に加えて、今年はサイクロンによる大洪水の影響が深刻だという。10月にも収穫期だったコメや野菜が甚大な被害を受けた。食材の高騰が激しく、現地からは食料支援を求める声が強い。美恵子さんは今月下旬、3年ぶりに渡航し、約40日間滞在して現地の状況を確認する。

 女性たちは刺繍作品を大切に抱えて守り、日本に届けられた。夫妻は「貧しさの中で生活を向上させ、子どもたちに教育を受けさせたいと、頑張る女性たちの作品を見てほしい。ノクシカタ刺繍を知っていただいて、協力の輪を広げられたら、とてもありがたい」と話している。

 展示時間は午前10時~午後6時。12、13日は午後3時まで。問い合わせは、楽風(電話048・825・3910)へ。

ツイート シェア シェア