峠の急カーブでスピード競う、騒音に住民ら「雨戸閉め我慢」 飯能署、ローリング族撲滅へ摘発強化
日高市から飯能市を抜け、秩父市方面へと延びる国道299号。日中はツーリングやドライブに適した山あいの道路だが、休日深夜になると峠に連なる急カーブを高速で走り抜ける「ローリング族」が集まってくる。迷惑な騒音や危険な暴走行為は後を絶たず、近隣住民は頭を悩ませている。飯能署は県警本部や関係機関と連携し、ローリング族を撲滅しようと今年、道交法違反の共同危険行為を積極的に適用し、摘発を強化している。
■競い合い
「この音では近所迷惑になる」。改造車両のエンジン音を確認した警察官が、運転の男性に指摘する。299号沿いの西武秩父線正丸駅前で9日深夜、飯能署が県警交通機動隊や国交省埼玉運輸支局と合同で実施した街頭検査。この日は午後11時半から午前4時ごろまでの間に、違法マフラーによる排気騒音、着色フィルム貼り付けによる整備不良など不正改造車両を取り締まり、計13件の道交法違反を摘発した。
同署によると、ローリング族は、その場で出会った者同士でスピードを競い合っているという。週末の午前0時すぎになると、コースの出発地点とされる飯能市内のコンビニエンスストアに続々と集結。マフラーを改造した車両などでたけだけしいエンジン音をうならせる。
コンビニ近くに住む60代女性は「一向にエンジン音が鳴りやむ気配がなく、雨戸を閉めて寝ている。ひたすら我慢の日々」と顔をしかめる。
通勤で299号を利用している入間市の50代会社員男性は「事故に巻き込まれる恐れがあるから、深夜の走行は避けている」と話す。
■命を大切に
同署によると今年1~10月に飯能市内から寄せられた暴走行為に関する110番件数は51件。「エンジン音がうるさい」「車両が集団で道路に止まっていて迷惑」といった内容が多いという。110番そのものは前年と比べ66件減少しているが、「パトカーが現場に着いた頃には既に騒音が収まっていることが多いため、警察に通報しても仕方がない」(60代女性)との声もある。
飯能地方交通安全協会の金子堅造会長(76)は「299号の環境は、20年以上前からほとんど変わらない。暴走事故は自分の責任だが、住民や一般車にも迷惑を掛けていることを自覚し、命をもっと大切にしてほしい」と訴える。
■8人逮捕
県警交通捜査課は、2台以上の車両で運転技術や区間走行時間の短さを競い合う暴走行為を、道交法違反の共同危険行為として摘発。去年は0件だったが、今年1~10月末に4件8人を逮捕した。
飯能署管轄内の299号沿道で、今年1~10月に摘発した道交法違反は前年比8件増の206件で、速度違反が大半を占めている。同署内で起きた昨年の死亡事故は8件で、うち4件が299号で発生している。速度超過でカーブを曲がり切れず、ガードレールや対向車とぶつかるケースが多かったという。
同署の宗口義克交通課長は「今後も頻繁に取り締まりを行い、ドライバーたちに警戒心を促すことで、暴走行為を一件でも減らしていきたい」と話している。