エスカレーター立ち止まり条例、埼玉で施行 習慣変わらず片側空けて利用「知らない」「必要性分からない」
エスカレーターで歩かず、立ち止まって利用することを義務付けた全国初の「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が1日、県内で施行された。駅エスカレーターの利用者からは「条例を知らなかった」「必要性が分からない」などの声が多く聞かれた一方、事故防止を目的とする条例の趣旨に賛同する利用者も見受けられた。
JRさいたま新都心駅ではエスカレーターの乗降口付近に立ち止まって利用するよう呼び掛けるポスターを掲示。ただ、通勤ラッシュを過ぎた時間帯も、エスカレーターを駆け降りたり、片側を空けて利用したりする光景が見られ、条例が十分に周知されていない状況を物語っていた。
「急いでいる時にはどうしてもエスカレーターを歩きたくなる。個人的には、利用者が少ない時間帯は歩行してもいいのではないか」。60代の男性会社員は弾力的な運用を求める。40代の女性は、歩いて利用する人のために片側を空けるという同調圧力を感じ、「自分もそういった乗り方をしてしまう」と苦笑い。
10代の男子学生も時間に余裕がない時にはエスカレーターを駆け上がっている。条例については知っていたが、これまで身に付いた習慣を急に変えるのは難しいという。70代の女性も「せっかちな性格なので、歩いてしまう。これまで通りでいいのではないか」と話した。
過去にエスカレーターで危険な目に遭ったり、小さい子どもを育てる親からは歓迎する声も。エスカレーターで体勢を崩した人に巻き込まれそうになった経験がある30代の男性会社員は「事故を少しでも減らせるのであれば」と賛同する。
9歳の子どもを持つ40代女性は、子どもと一緒に利用する際に手を握るために横並びになることが多く、勢いよく駆け上がる利用者に恐怖を感じたことがあり、「子育て世代の親にとってはありがたい。利用者にはもっと周りに配慮してほしい」と訴えた。
JR東日本大宮支社の大西精治支社長は、9月22日の定例会見で「これまでも立ち止まった状態での利用を促す呼び掛けは行ってきたが、さらに条例が行動意識を変える大きな転換点になるように対策を考えていきたい」と話した。