制服代の負担大きい…埼玉・北本高校、制服を定額で貸し出し LGBTQにも対応、保護者アンケートで導入
県立北本高校(北本市古市場、金室紀夫校長)は今春4月から、久喜市の制服製造「光和衣料」(久喜市菖蒲町昭和沼、伴英一郎社長)と連携し、制服を定額で貸し出すサブスクリプションサービス(サブスク)を導入する。県内では初の試み、全国的にも例がないという。
サブスクは、定額の使用料を支払うことで、期間中サービスを受けられるビジネスモデル。動画配信や自動車、飲食をはじめ、幅広い分野でサービスが広がっている。
同校は制服のサブスクを来年度の新入生から導入。従来通り購入もできる。同校指定販売店が、購入とサブスク両方のサービスに対応する。
サブスクを利用する場合、購入より安い費用で制服を借りることができる。スマートフォンを活用したリモート採寸が可能。オプションサービスでサイズの交換や破れたりした場合に交換もできる。
保護者らへのアンケートから「制服代の負担が大きい」との声が上がっていた。学校目標の変更や特別支援学校分校の設置に合わせ、制服のデザインをリニューアルしサブスク導入を決めた。
金室校長は「新生北本高校を打ち出したい。保護者や生徒の負担軽減を図るための取り組み。生徒募集に向け効果を期待している」と意気込みを述べた。
背景には「公立高校の生き残り」に懸けた危機感がある。近年、私立高校の人気が高まり、公立校の定員割れが相次ぐ。独自色を出しにくい公立校で、他校との差別化を図り魅力を創出したいとの思いだ。
光和衣料は今回コンペティションに選ばれ、同校の制服リニューアルに取り組む。同社伴社長によると、サブスクは作り手側にもメリットがあるという。
通常春の入学時期に向け、夏服・冬服を仕立てるが、サブスク導入により、夏服の注文を夏前にずらすことができる。繁忙期の注文を避けることで、余剰在庫の軽減、外注や残業といった経費削減、納期の安定化につながるという。
同社は価値の多様化やSDGsに向けた制服の在り方を重視し、教育との親和性を図る。パンツ、スカートが選べることで性的少数者(LGBTQ)のニーズに対応、コロナ禍でリモート採寸を採用、包装はリサイクル紙を使用、廃棄する制服は車のカーシートの素材として再利用するなど、工夫を凝らした。
伴社長は「成長期の子どもにとって後から交換できることが最大のメリット。家庭にとってはコスト減につながる。公立から私学へ、さらには中学へとサブスクが普及することで市場が拡大すれば」と話している。