埼玉新聞

 

フードデリバリーの原付バイクが高速道に ナビの誘導で…誤進入が増加、事故の可能性も 埼玉県警が注意

  • 関越道練馬インターチェンジの入り口。右側が高速道で左側が一般道=1月14日午後、東京都練馬区(画像を一部加工)

  • 高速道の案内は緑色で、一般道は青色で色分けされて、見やすくなった関越道練馬インターチェンジにつながる目白通りの路面表示(県警高速隊提供)

 高速道路で走行が禁止されている原付バイク(125cc以下)などが誤って進入する立入事案の報告数が増えている。フードデリバリーの配達員らがスマートフォンの地図アプリに誘導され、気付かずに入ってしまう場合が多いという。特に目立つのが東京都練馬区の関越道練馬インターチェンジ(IC)の入り口。一歩間違えば重大事故につながりかねず、県警高速隊は「ナビだけではなく、道路の形状をよく見て安全に走ってほしい」と注意喚起している。

■練馬IC、突出の多さ

 練馬ICは都内だが、管轄はネクスコ東日本関東支社所沢管理事務所で県警高速隊の管内。高速隊によると、2020年の立入事案は関越道を筆頭に外環道など計272件。うち関越道が181件で練馬ICが113件で全体の41・50%を占めた。昨年も全体288件中、練馬は112件で同39・60%と同様の傾向は続く。19年は、練馬は80件で全体の32%だっただけに件数、割合ともに、ここ2年で増加しているのが分かる。

■コロナと道路形状

 原因として、高速隊は新型コロナウイルスの影響が関連しているとみる。高速隊隊長補佐で所沢分駐隊の石塚弘行隊長は「数年前から宅配サービスの需要は高まり、コロナで一気に上がった。それが誤進入が増えた背景にあるのでは」と分析。時間帯別では昼食、夕食時が多く、年代別でも20、30代が突出している。密になる電車移動を避け、原付バイクなどの利用者が増えたことも挙げられるという。

 練馬の入り口は道路の形状が分かりづらいのも難点だ。目白通りを北上し、三軒寺の交差点を直進するとそのまま高速へ入れ、一般道が側道になっている。新座料金所まで距離があるのも一因で、誤進入に気付いた時には引き返せない状況になっている。

 通報は目撃した乗用車の運転手からが大半で、原付バイクなどの運転手からは「スマホのナビを見ていて、誘導されたから入った」という言い分が圧倒的に多いという。通報を受けると、警察のパトカーとネクスコの道路パトカーで対象車を挟んで路側帯をガードしながら走り、一番近い出口から一般道に戻す。誤進入は罪には問われないが、対処しなければならず、事故捜査などに影響を及ぼしかねない。

■視覚に訴える路面

 高速隊はネクスコ東日本関東支社所沢事務所と連携して昨年12月末、対策を講じた。

 練馬の入り口には高速と一般道の分岐に「関越道 原付等進入禁止」と記された小さな案内板や、2車線に「関越入口」、1車線に「大泉外環」の路面表示があったが、摩耗して白字が消えかかっていた。そこで同事務所に依頼して分岐点と手前5カ所の2車線の「関越道」表示を描き直し、残る1車線は「一般道」「外環道」に表示を変更。高速道は緑、一般道は青色とそれぞれのイメージカラーを基調にカラフルに描き直した。

 歩道橋3カ所に横断幕も設置。視覚の上下から訴えることで同事務所の松田隆弘管理担当課長も「手前から目立つようにしたので抑止効果につながれば」と期待する。会員制交流サイト(SNS)やツイッターでの発信など、今度も協力して啓発活動に力を入れていく予定だ。

 これまで立入事案に関連した事故は発生していないが、実際に起きれば、当事者はもちろん、走行禁止の車両を見つけた乗用車の脇見運転や車線変更などで別の事故を誘発する可能性もある。高速隊の加藤成樹副隊長は「全体の交通量が増えているので、とても危険。自分が何に乗っていて、どこを走ってはいけないのか、基本的な部分を注意してほしい」と呼び掛けている。

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