動物園でリラックスを ウクライナ避難者100人が交流 親子連れら笑顔も 埼玉・東武動物公園
ウクライナから戦火を逃れて日本に避難した人たちに安らぎの時間を過ごしてもらおうと、宮代町の東武動物公園で、避難者を対象にした催しが11日開かれた。参加した約100人は、動物を見て笑顔を見せ、情報交換したりと、先行きが見えない生活下で、つかの間の和やかなひとときを過ごした。
催しは心理カウンセラーらで構成される全国心理業連合会が、避難者を支援するウクライナ交流センターひまわりを5月に設立して企画。東武動物公園と連携し、交通費や食事代、入園料などを負担して呼びかけた。参加者は当初、数家族が来る程度と想定していたが、口コミで広まって約100人に上った。
この日は、昼前に宮代町の東武動物公園駅に集まり、園内で昼食を取った。参加者同士で互いに情報交換したり、親子連れが動物を見て笑顔を見せた。
全国心理業連合会代表理事で交流センター代表の浮世満理子さんは「避難者が生活するための支援が行き届いていない現状がある」と指摘し、「自然の中でリラックスし心の安心を感じてもらえる機会をつくりたかった」と企画の意図を語った。
ただ、避難者を取り巻く環境は先行き不透明だ。ウクライナ南東部ザポリージャ州から逃れてきた60代の女性は、都内に住む娘の元に避難。おびえながら街を出るバスを待ち続けた記憶に触れ、「ロシアに占領された地域では、市民にロシアのパスポートが配られている」と声を落とした。
日本に18年住む女性は、ロシアの侵攻後、東部ドニプロに住む母親を呼び寄せた。「とても悲しい。母が避難し安心したが、(故郷での)恐怖と不安で毎日落ち着かない日々を送っている」と打ち明けた。
首都キーウからポーランドを経て避難したアナスタシアさん(25)は「まだ(キーウには)爆弾が落とされている。日本に興味があり訪れた。当分は滞在し、日本語を学びたい」と視線を未来に向けた。
浮世さんは「心のケアの支援は始まったが、生活支援はまだまだ。移動のための交通費や勉強、就労の機会を得るための支援が必要。もっと隣人として受け入れることができるよう、国や自治体は支援してほしい」と課題を挙げた。