教室冷やす「プロの技」 小学校で遮熱プロジェクト 「教室は体を鍛える場所ではない」 子どもも改修参加
断熱、遮熱をすることで、暑過ぎる教室の温度を下げるプロジェクトが2022年夏、さいたま市の小学校で実践された。断熱改修のプロ集団が天井や梁(はり)、壁に断熱材を整備し、窓には遮熱マットを設置した。教室内や天井の温度が低下し、専門家は「日射遮蔽(しゃへい)、天井断熱の効果は大きく、教室内の環境が改善した」と話している。
断熱改修されたのは、同市立芝川小学校(大宮区天沼町)4年1組の教室。校舎は1974年築の鉄筋コンクリートで、同教室は最上階の4階、南端に位置する。窓側は東に面して早朝から日光が差し込み、日中は天井に蓄熱して、室内の気温が上昇する。
工事は夏休みの8月上旬、3~4日間かけて行われた。教室の天井と梁に断熱材を入れ、窓にアルミ材使用の遮熱マットを設置した。担当したのは、住宅断熱の専門家らでつくる「さいたま断熱改修会議」。2019年から断熱、省エネの啓発活動を市民向けに実施している。ワークショップも開き、参加した子どもたちは工事を手伝いながら、地球温暖化の影響を学んだ。
改修後のアンケートに、子どもたちは「前は『もわっ』としていたけど、工事をしたら、『キーン』と冷えていました」「校庭で遊んで汗びっしょりで帰ってきて、授業をしたとき、汗が乾いていました」などと回答している。
教室内に複数の温度計を設置し、気温を計測。改修前後の気温データを解析した東京大大学院工学系研究科の前真之准教授(建築工学)は、9月の外気温が7月より平均3・2度下がっているなど気象条件が違っているとしながら、効果は大きいと評価する。
環境省が熱中症予防に活用している「暑さ指数」(WBGT)では、31以上が「危険」、28以上が「厳重警戒」、25以上が「警戒」、25未満が「注意」と示されている。改修前の7月は、厳重警戒の日が複数あり、平均26・7。改修後の9月は平均23・7で注意となった。天井の平均温度は32・6度から、改修後に6・2度下がっている。
前さんは「屋根からの熱の侵入を防ぎ、室内の気温を下げた。教室は体を鍛える場所ではなく、最上階の教室は断熱改修をした方が良い」と指摘。ウクライナ情勢による光熱費の高騰が続く中、「遮熱、断熱改修されれば、エアコン使用で低コストにつながる。関心を持ち、できることから始めてほしい」と話した。
同会議議長で工務店代表の佐藤喜夫さんは今回の結果について、「経験からある程度の想定をして工事を進めた。データで効果を裏付けることができ、断熱改修会議の勉強の成果だと思う」と語った。
課題は費用。天井の断熱改修だけでも約80万円と見積もられている。今回はメーカーから断熱材の提供を受け、同会議がボランティアで工事した。プロジェクトに関わったさいたま市の非常勤職員宮本恭嗣さんは、市の予算による改修は困難との認識を示した上で、「断熱改修は健康に良く、エネルギーコストを下げる取り組み。環境教育の機会でもあり、体感することで重要性を多くの人に知ってほしい」と話していた。