埼玉新聞

 

無投票選挙の多い「無風の町」 独自の施策、内外から評価も「マンネリ化」懸念 横瀬町長選、あす告示

  • 気軽に交流できるコミュニティー設備が充実した町中心部=6日、横瀬町横瀬

    気軽に交流できるコミュニティー設備が充実した町中心部=6日、横瀬町横瀬

  • 気軽に交流できるコミュニティー設備が充実した町中心部=6日、横瀬町横瀬

 任期満了に伴う横瀬町長選は10日告示される。立候補を表明しているのは3選を目指す現職の富田能成氏(57)のみで、2期連続で無投票となる公算が大きい。富田氏は町長就任時から一貫して、人口減少を抑制する取り組みを推進。8年間で積み上げた町独自の振興計画が生き、昨年の町人口は、目標(戦略人口)を上回った。住民は、「地域交流の場が広がった」と富田氏の施策を評価する一方、「無投票だと、町が栄えずマンネリ化してしまうのでは」と、町政に新風が吹かない現状を不安視する声も上がっている。同町は、1984年以前の「横瀬村」時代から、無投票選挙が多く、首長の長期在任が続いている。

 富田氏は、2015年の町長選で新人同士の一騎打ちを制して初当選。人口減少が続く町の未来を変えようと、現在まで数々の施策を策定、実行している。先進的なプロジェクトや事業を誘致する官民連携プラットフォーム「よこらぼ」は昨年末時点で125件を採択。町民と町外利用者との交流施設「LAC横瀬」「NAZELAB」なども昨年から本格稼働し、町の中心地が確立されつつある。

 町によると、国勢調査のデータを基に算出した22年4月の同町の趨勢(すうせい)人口は7517人、戦略人口は7737人。対して、実際の同期の町内人口(住民基本台帳)は7937人と、目標を200人上回っている。町独自の取り組みはメディアにも多く取り上げられ、21、22年の「住み続けたい自治体ランキング」(SUUMO調べ)で県内上位に選出された。

 秩父地域の自治体関係者は「(富田氏は)一定の成果を上げているので、対抗馬が出ても負けることはない」と今回の選挙結果を予測する。80代の男性町民は「町が運営する交流施設やウオーキングイベントに参加するようになり、健康的な生活が送れるようになった」と語り、現在の町政に満足そうな様子を見せた。

 一方で、80代女性町民は「この地域は、長期にわたり富田さんと加藤さんが首長を務めている。新人が出馬しないと、町がマンネリ化してしまうのでは」と不満を口にする。町選管委などによると、前町長の加藤嘉郎氏は4期(1999年~2015年)、前々町長で、富田氏の父・孝氏は横瀬村長を含めると7期(1971年~99年)務めていて、無投票当選は、2人合わせると6回以上ある。

 「首長の長期在任が続くと、町職員は『町長に従えば間違いない』と考え、業務がなあなあになってしまうのではないか」と女性町民は心配する。「正直、今の町政に全く不満がないわけではない。もし対抗馬が出て、その人の主張に賛同できれば、投票したいと考えている」と本音をこぼす。

 2児の母の30代女性は「交流スペースは充実しているが、子どもが遊べる施設は少ない」と指摘し、町内に遊具を備えた公園整備を望んでいる。8日現在、富田氏の対抗馬がいない現状については、「新たな町改革を主張する立候補者が現れれば、今まで分からなかった町の課題が見えてくることもある」と語り、選挙戦を期待している。

 有権者数は昨年12月1日現在、6763人(男3372人、女3391人)。

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