川口舞台に映画製作、障害、鋳物、異文化盛り込む 「車線変更-キューポラを見上げて」来冬公開目指す
障害者にスポットを当てた作品で知られる映画プロデューサー、国枝秀美さん(59)が川口を舞台にした映画「車線変更―キューポラを見上げて」を製作する。11日、都内で製作発表の記者会見が開かれた。1964年東京五輪の聖火台を作った鋳物職人の父と母を持つオートレーサーの主人公が事故で障害者になるが、多くの人との出会いを通して、2020年の東京パラリンピックを目指す物語。「さまざまな民族の思いが色濃く残る街、川口で鋳物を守り続ける父と家族の絆、人々が障害に立ち向かう姿を力強く描きたい」と国枝さんは話している。
オートレースとキューポラのある鋳物工場で知られた川口。オートレースは今も健在だが、1970年代に500基が空に向かって火を吐いていたというキューポラは今、現役で動くのは10基だ。
映画は主人公の野平幸助がオートレースの練習中の事故で障害を負うところから始まる。「幸助を待ち受けていたのは健常者の時には想像もつかなかった閉鎖された環境と、哀れむような世間の目。しかし、両親の厳しく深い愛や、やがて出会った人々が絶望する幸助を変えていく物語です」と国枝さん。
出会うのは心や身体の障害を負っていたり、人種による差別を受けているなど、さまざまな悩みを抱えながら元気に生きようとする人たち。彼らが少しずつ幸助を変えていき、義足の女性ロードレーサーとしてパラリンピック金メダルを目指す女性と出会い、再び夢を追って走り始める。
幸助役に平田雄也さん(25)、在日韓国人と2人でキューポラを守る鋳物職人の父親役に村上弘明さん(62)、母親役に岡江久美子さん(62)、恋人役に中川知香さん(25)を起用。国枝さんがタレント養成教室で育てた障害者たち約10人も起用される。監督はテレビドラマ「教師びんびん物語」などを演出した赤羽博さん(67)が務める。
製作発表会見には国枝さんや出演者らが出席した。平田さんは川口オートレースのトップ選手のユニホームを着用、村上さんは鋳物工場の職人らしい作業服で登場した。
川口に住んで40年になるという国枝さんは「5年前から温めていた企画で、人権とは、人種差別とは、など社会の深いところにある問題を描きたい。在日コリアンのことも含めて、異文化との共生を考えたい。私が長く住む西川口はとても愛のある街だ。そこも表現したい」と意気込みを語った。
「筆子・その愛・天使のピアノ」「望郷の鐘・満蒙開拓団の落日」など、障害者にスポットを当てた作品をプロデュースしてきた国枝さん。障害者の目線からカメラを据え直し、差別や偏見を突き破る精神、川口の街の魅力や愛すべき人の姿が見えてくる映画を目指す。
映画は19日に撮影を開始し、2月中に撮影を終え、秋に川口で先行上映し、来冬の全国公開を予定している。