歴史は繰り返す?! 明治時代の「接種証明書」や大正時代の手作り「マスク」 さいたまで2月まで企画展
天然痘やスペイン風邪など、先人たちの感染症対策を文書を通じてたどる企画展「感染症と対策の歴史―祈りから『いのり』へ―」が、さいたま市浦和区の県立文書館で2月12日まで開かれている。国重要文化財の埼玉県行政文書を中心に、江戸時代~近現代の資料を約40点展示。同館では「ウイズコロナの時代を生きる指標探しの機会となれば」としている。
日本では古くから病気は目に見えない疫病神などの仕業とされ、呪術的な対策が取られていた。疫病神を追い払うとされた三峯神社のオオカミの護符をはじめ、赤い色は災厄を払うと信じられていたことから赤飯を病気の見舞品としたことを記した文書も。また、文久2(1862)年のはしか流行時に出版された「はしか絵」には、ヒイラギの葉を煎じて飲ませるなど民間療法も描かれている。
明治時代になると、近代医療が導入され、感染症対策は大きく変わる。明治8(1875)年に発行された種痘の接種証明書は、天然痘予防のために生後10カ月の赤ちゃんに種痘を行ったことを示すもの。当時は種痘を嫌う風潮が根強かったが、埼玉では普及が進んでいたことをうかがわせる資料だ。
明治時代のコレラ流行時に国が通達した予防規則では、感染拡大を防ぐため、芝居や寄席の興行中止、悪疫除けと称した神輿(みこし)担ぎの禁止といった記述も。また、大正時代のスペイン風邪流行時に埼玉県が県民向けに製作したポスター「流行性感冒の予防心得」には、呼吸保護器(マスク)の着用が推奨され、作り方の図も描かれている。
同館の学芸員の駒見敬祐さん(35)は「感染症予防の根本的な対処法は現代と変わらない。これまで感染症を克服してきた歴史があり、コロナ禍も克服できると信じている」と話していた。
問い合わせは、同館(電話048・865・0112)へ。