埼玉新聞

 

残忍な犯行、動機に謎多く…逮捕の男「覚えない」「知らない」 飯能3人殺害から1カ月、地道な捜査続く

  • 夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=23日午前、飯能市美杉台

    夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=23日午前、飯能市美杉台

  • 夫婦と長女の3人が殺害された現場の住宅=23日午前、飯能市美杉台

 昨年12月、飯能市美杉台の住宅で夫婦と帰省中だった長女の3人が殺害され、近所の無職の男(40)が逮捕された事件から25日で1カ月。これまでに県警は住宅に住んでいた男性とその妻に対する殺人容疑で男を送検し、夫婦の長女への殺人容疑や3人を殺害後に住宅に火を付けた放火容疑での立件を視野に捜査を進めている。一方で動機の解明には至っていない。男は強い恨みがあったとみられるが、取り調べでは一貫して容疑を否認。周辺の話からも男方からの押収物の中にも残忍な犯行に駆り立てた“何か”に結び付きそうな物は出てきておらず、依然として謎のままだ。

■証拠積み上げ

 12月25日午前7時過ぎ、飯能市美杉台4丁目の住宅敷地内で、米国籍の無職男性(69)と妻の無職女性(68)、長女の会社員(32)=東京都渋谷区=が複数回殴打され、殺害された。

 3人とも首や頭など上半身を鈍器のような物で執拗(しつよう)に殴られ、激しく出血していた。腕などには身を守る際にできる防御創があったという。男が強い殺意を抱いて犯行に及んだとみられる。

 県警は容疑者宅から複数の鈍器、血の付いた衣類や手袋などを押収。このうち、複数の衣類に付着していた血液が親子3人のDNA型と一致したほか、被害者宅の防犯カメラに男が鈍器のような物で家族を襲う様子の一部が映っていたことや近隣住民の目撃情報など、犯行を裏付ける証拠を積み上げている。

■過去も供述拒否

 一方で動機面は見えてこない。男は口数は多くはなく、これまでの取り調べで自身の生い立ちや生活実態については多少は答えるが、事件に関しては黙秘したり、「身に覚えがない」「逮捕された内容について知らない」と犯行を否認。男性宅では2021年8~12月、車や門扉を傷つけられる被害が6回あり、男が昨年1、2月に器物損壊容疑で現行犯を含め計3回逮捕された際も供述を拒み続け、嫌疑不十分で不起訴となっている。

 夫婦は車などを傷つけられる被害に遭った理由を、当時県警に対して「心当たりがない」と説明していたという。周辺でトラブルを抱えている認識はなかったとみられる。

 県警は昨年12月29日に男方の現場検証を終え、押収物を分析している。ただ現状で動機につながりそうな物や痕跡は出ていない。捜査関係者によると、離れて暮らす男の母親ら親族も「(動機について)思い当たることはない」と話しているという。

■外部と接点なく

 県警によると、男は2008年ごろから、男性宅から約60メートルの住宅で1人で暮らし、ここ数年は定職に就いた形跡はなく、母親からの仕送りで生活。携帯電話やパソコンなどのデジタル機器は所持しておらず、固定電話も設置されていなかった。

 近隣住民によると、敷地内に車は止まっていたが使っている様子はなかったという。自宅で1人で過ごす時間が多く、近所付き合いも含めて外部との接触機会はほとんどなかったとみられている。

 県警は、引き続き被害者との接点や器物損壊事件との関連などを洗っている。事件の全容解明に向けて、ある捜査幹部は「犯行を立証できる材料はそろっている。動機については外部からの話を聞くとともに、さらに(男を)追及して、供述を引き出したい」としている。

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