埼玉新聞

 

救急搬送で活用も…医療情報共有システム、財政難で終了へ 埼玉県東北部の「とねっと」 システム更新契機

  • 診療検査や投薬内容などの医療情報を共有できる「とねっと」の「かかりつけ医カード」

    診療検査や投薬内容などの医療情報を共有できる「とねっと」の「かかりつけ医カード」

  • 診療検査や投薬内容などの医療情報を共有できる「とねっと」の「かかりつけ医カード」

 県東北部の7市2町で、登録者の医療情報を共有する「埼玉利根保健医療圏地域医療ネットワークシステム(通称・とねっと)」が、来年度で事業を終了する方向で協議していることが分かった。2012年に運用を始め、全国の先進モデルとして注目を集めたが、財政難から撤退する意向の自治体があり、24日に開かれた会合で、終了に向けた方向性が示された。

 「とねっと」は行田、加須、羽生、久喜、蓮田、幸手、白岡市と宮代、杉戸町の7市2町で、ネットワークに登録した住民の医療情報を、域内の医療機関や消防が共有。適切、迅速な医療処置や救急搬送に役立てている。昨年11月末現在で3万5537人が登録している。利用者の体温や血圧をアプリに入力し、日々の健康管理に役立てている利用者も多い。

 とねっとを運営する埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会事務局(加須市)によると、システムの契約期限が本年度末に迫り、事務局は延長、更新する方針を提示。年間の運営費が約3600万円に上ることから、複数の市町が事業から撤退する意向を示した。

 一方、継続を求める自治体もあり、利用者への周知を図るため、来年度1年間は事業を継続することで各市町が同意したという。

 同事務局は「継続を望んでいる自治体があり、現時点ではあくまで協議を進めている段階だが、財政が厳しい中、やめたいという自治体がある。税収が伸び悩み、社会保障費が増える中、各自治体が政策判断をしている」と述べた。

 域内にある医療機関の医師の1人は「(とねっとは)年間数千件の救急搬送で活用されている。高齢者の1人暮らしが増え、頼りにしている利用者、救急隊員も多い。個人の健康データを今後どうするかなど、いろいろ問題がある」と指摘している。

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