53歳、思わず「もう1回!」 鋳物のまち・川口でベーゴマ大会 昭和の子どもも令和の子どもも夢中に
川口市芝の市立芝南小学校(加藤智美校長、児童数560人)で、児童の父親らでつくる「親路の会」主催でベーゴマ大会が開かれ、親子30人が参加した。鋳物のまち川口を象徴するベーゴマで、いずれは市内の他校の児童と同時開催による参加人数の多さを競うギネス記録に挑む計画だ。主催者は「コロナ禍だからこそ、レトロでみんなで楽しめるベーゴマが子どもたちには必要だ」と大会は盛り上がった。
プラスチック製の30リットル入り漬物のたる上に木綿の帆布を張ると、直径約40センチの床(とこ)をつくった。床の上でベーゴマを回し相手のコマを床の外へ弾き飛ばせば勝ち。加藤智美校長(53)も子どもたちに一緒に腕を振った。子どもに負けた途端、校長が思わず叫んだ言葉は「もう一回やろう」。すっかり昭和の子ども時代に戻り、熱くなっていた。
「勝負して校長先生に勝った」と2年生の蟻川花央(はんな)さんや6年生の成田彗悟さんたちは笑顔。ひときわベーゴマを扱うのがうまかった3年生の鷹宮浩希さんは「お父さんに勧められて1年生の時に覚えた。ベーゴマはテレビゲームのように電気を使わない。なのにすごく楽しい」と話した。浩希さんの父で親路の会代表の鷹宮亮二さん(43)は「ベーゴマにはテレビゲームにない楽しさがある。マスクをして顔が見えない今のコロナ禍のご時世にこそ、ベーゴマのようなレトロな遊びが必要だと思う。子ども同士、親子、親同士のコミュニケーションを図ることができる」と話す。
ベーゴマ大会に駆け付けたのは、毎月第1土曜日の午後に川口駅西口公園でベーゴマ道場を開いている「川口ベーゴマクラブ」の名人3人。最高齢の杉戸町の松下茂夫さん(84)は「指導の基本は糸を巻いたコマを子どもたちに渡し、まず投げて回すことを教える。難しい糸巻きより回す喜びをまず感じてもらう」とモットーを話す。クラブの運営者で、日本で唯一のベーゴマメーカーの日三鋳造所社長の辻井俊一郎さん(75)は「子どもの笑顔が一番のごちそうだね」と目を細めていた。