埼玉新聞

 

緊迫…「いらっしゃいませ」の女性店員が動揺 刃物男3分で強奪、じつは訓練 直後、床に新聞紙を敷く理由

  • 訓練で犯人役に刃物を突き付けられ、動揺した様子を見せる職員=16日、さいたま市見沼区の埼玉縣信用金庫大和田支店・七里支店

    訓練で犯人役に刃物を突き付けられ、動揺した様子を見せる職員=16日、さいたま市見沼区の埼玉縣信用金庫大和田支店・七里支店

  • 訓練で犯人役に刃物を突き付けられ、動揺した様子を見せる職員=16日、さいたま市見沼区の埼玉縣信用金庫大和田支店・七里支店

 川口市で16日に起きた郵便局強盗は局員の男女2人が切り付けられて重軽傷を負った。事件直後、さいたま市の信用金庫では強盗訓練が行われ、職員たちは現実味を帯びた緊張感の中で、有事の初動対応などを確認した。県警は窓口を乗り越えられ、犯人との距離を詰められないために設備の点検や非常時の対応の確認を呼びかけている。

■県警「設備など再確認を」

 訓練は埼玉縣信用金庫大和田支店・七里支店で実施。大宮東署と同庫職員ら約20人が参加した。郵便局での事件と同様に刃物を持った男が窓口勤務員を脅して現金を要求することを想定。より現実の強盗事件に即した状況を演出するため、企画した大宮東署はこの想定を職員には伝えずに訓練が始まった。

 午後4時すぎ、黒いフードを被った男が店舗に入ると、窓口勤務の女性が立ち上がりあいさつをした。男はその声をかき消すように、低い声で「金を出せ」と要求。右手には包丁のような刃物が握られていた。女性は冷静さを保とうとしていたが動揺した様子を見せ、男を刺激しないように現金を手渡した。この間約3分。一瞬の出来事に同支店の塩田竜主支店長は驚いた表情を見せつつ、「実際に犯人と対峙(たいじ)した時、いかに冷静になれるかが大切」と振り返った。

 男が店舗から逃げた直後、職員らはわれに返ると、すぐに動き出した。▽110番通報▽犯人が乗り込んだ車のナンバーの記録▽足跡保存のために床に新聞紙を敷く▽犯人の特徴のすり合わせ―。これらを同時に行い、約10分後に同署の警察官が現場に到着すると訓練は終了。職員らは同署の川嶋雄介生活安全課長が犯人逃走後の職員の迅速な対応を評価すると、緊張感から解放され顔をほころばせた。

 川嶋課長は、事件を目の当たりにすると気が動転し、多くのことを同時にこなすのが困難になることを指摘。「犯人像などは1人で全身を記憶しようとするのではなく複数人で記憶するなど、より細かい役割分担が大事」と講評した。

 同日に発生した郵便局での強盗事件にも言及し、「『いつどこで事件が起こるか分からない』という言葉を強く再認識した日になった。今後も緊張感を持って管内の訓練に取り組みたい」と話した。

 川口の郵便局強盗では、捜査関係者によると、押し入った男が「金を出せ」と窓口にいた20代の女性局員を脅した後、カウンターの内側に侵入し、40代の男性局員と30代の女性局員を切り付けたという。

 県警生活安全総務課は「容易にカウンター内に入られたり、乗り越えられないための設備の点検や各種金融機関ごとに非常時の対処要領などをもう一度、確認してほしい」と呼びかけている。

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