「一緒に行こう」初のペット同行避難訓練 2019年の台風避難所での混乱受け戸田市 獣医師らアドバイス
戸田市は、新曽福祉センター駐車場で、犬や猫などを飼っている家庭を対象に「ペット同行避難訓練」を開催した。同市は、県獣医師会南支部と災害時協力協定を締結。同協定による初めての訓練となった。当日は、ペットの避難について相談窓口が設置され、地元の獣医師たちが個別相談に応じた。犬39匹、猫10匹と一緒に家族連れ約100人が参加した。
2019年10月の台風19号の際、戸田市内では約4千人が小学校など市内避難所に避難した。その時、ペットと一緒に避難した人が多くいた。しかし、ペットの受け入れについて統一した基準はなく、訓練もしていなかったため、市民からは「ペットのことも考えてほしい」と要望が出た。このため同市は22年11月、獣医師会と災害時協定を結んだ。
■「うちで一番偉い」
同日午前9時、住宅街の中を犬を連れた家族たちが続々と福祉センターを目指して歩く姿があった。14歳の犬のコタローと歩く細野輝男さん(85)は「こいつは6畳の寝室でおっ母とおれの間の真ん中に寝ている。うちで一番偉い」。妻のとし子さん(75)は「だから避難する時はコタローも一緒」と話した。
参加者は受け付けの後、市内のドッグトレーナー、遠藤ゆかりさんの講演を聞いた。遠藤さんは避難に必ず必要な犬や猫のケージについて「日頃からケージに入ることに慣れるような訓練が必要」と話し、訓練のやり方を解説した。
■切実な相談相次ぐ
県獣医師会南支部長の宗像俊太郎さん(44)は「こんなにたくさんの参加は驚き。素晴らしい。私たちも住みやすい街づくりに貢献したい」と話した。会場の個室型小型テントが獣医師の相談窓口となり、宗像さんや同市喜沢の獣医師、熊本順一さん(39)、川口市上青木西の獣医師安藤遥さん(35)らが対応した。
「うちの猫は下痢しやすい。避難所での生活が心配」「ペットのトイレはどうしたらいいか」など、切実な相談が続いた。宗像さんは「避難にはペット用の5日分ぐらいの食料、ペット用トイレも忘れないで」と話した。
■苦手な人へ理解を
戸田駅周辺の5千世帯が暮らす沖内町会の副会長、中目尚之さん(66)は「ペットと一緒の避難は大きな課題。今後は小中学生を巻き込んだ防災訓練にも力を入れ、その中でもペットの扱いを考えていきたい」と話した。
菅原文仁市長は「ペットがいるからと、避難しなかった人が二次被害に遭うケースもある。避難訓練ではペットも一緒に来てもらう形にしたい。一方でペットが苦手という人の理解を得ることも課題だ」と話した。