<埼玉公立高入試の解説速報>出題内容や配点…今年の難易度や傾向は
22日に県内各地で一斉に実施された「令和5年度県公立高校入試」。教育ジャーナリストの梅野弘之氏が分析した試験問題の難易度や特徴などを速報する。
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2月22日、令和5年度埼玉県公立高校入学者選抜<学力検査>が実施されました。
昨年度(令和4年度)入試では、英語(学力検査)を除く全ての教科で平均点が前年を下回りました。特に数学は、学力検査問題、学校選択問題ともに10点以上も下がりました。はたして今年の難易度はどうだったのでしょう。
以下、教科ごとに問題構成、出題内容、配点、難易度等について今年の傾向について見ていきます。
【国語】
大問構成と配点はこれまでと同じでした。
大問2は主に知識が試されますが、漢字の読みでは「赴く(おもむく)」がやや難しかったかもしれません。また、めずらしく季語に関する知識が問われました。俳句の季語は旧暦に基づいており、私たち現代人の感覚とはズレがあるので、難しく感じた人もいるでしょう。文法問題は「単語・文節・文」の区別が分かっていれば簡単に解けたでしょう。
大問3(長文読解・論説文)は、一昨年に続き哲学をテーマとした文章が出されました。文章自体は難解ですが、設問は例年通りです。問3(7点)、問5(7点)の記述問題が高得点を取れるかどうかの鍵になりそうです。
大問4(古文)の問4は今までにない出題形式でしたが、問題自体はそれほど難しくはありませんでした。
大問5(作文)は2種類のグラフを資料として、「インターネットの適切な利用」について自分の考えを書かせる問題でした。身近なテーマであり体験なども書きやすかったでしょう。書き方の条件等は例年どおりでした。
難問は少なく、平均点は例年並みと予想されます。
【数学】
一昨年から昨年にかけて学力検査問題はマイナス14.2点、学校選択問題はマイナス13.4点と、共に大きく平均点が下がりました。したがって、今年の難易度及び平均点がどうなるかに注目が集まっていました。
結論を先に言えば、どちらも平均点の上昇がみられそうです。
学力検査問題の大問構成は例年通りです。配点については大問1の65点は変わりませんが、大問2~大問4の配点はやや異なります。大問1は(10)(11)あたりまでは短時間で解けそうですが、後半の(12)~(16)、中でも(16)はやや苦しんだ人がいたかもしれません。大問2の作図は例年と異なり天体とからめた問題だったので、難しいと感じた人もいたでしょう。
学力検査問題の平均点は50点台に回復すると思われますが、上昇幅はそれほど大きくないかもしれません。
学校選択問題の大問構成や配点についても、特に大きな変化はありません。
高得点できるかどうかのカギは、大問4(2)の立体の体積を求める問題、大問5の(3)の円の性質や三平方の定理などをからめて解く問題あたりになりそうです。難易度の高い問題ではありますが、まったく手がつけられないほどの難問ではないので、平均点は昨年より上昇しそうです。
【社会】
大問構成はこれまでと同じでした。配点は大問6(三分野総合)が1点減り、その分大問2(日本地理)が1点増えた以外は変化がありませんでした。
大問2(日本地理)では、昨年に続き山脈名(木曽山脈)を問う出題がありました。地図(地形図)の読み取りに関する問題は、出題形式が変わり、地図記号に関する知識や距離の計算が必要なかったので答えやすかったでしょう。
大問3(江戸時代までの歴史)では、菅原道真を書かせる問題が出ました。受験生にはなじみの深い人物なので出来た人は多いでしょう。また、昨年は出題されなかった世界のできごとに関する問題も復活しました。参勤交代に関する問題が出ましたが、これは2019年度にも出題されています。
大問4(明治時代以降の歴史)では、例年通り年代の並べ替え問題が出ましたが、文章ではなく写真と新聞見出しが示される形だったので、答えやすかったと思われます。
大問5(公民)では、衆議院で内閣不信任の決議が可決された場合の内閣の対応についての問題が出ましたが、これも2019年度に全く同じと言っていい問題が出ています。過去問をしっかりやっていた人にとっては簡単だったでしょう。
全体としては答えやすい問題が増えた印象です。一昨年から昨年にかけて平均点が10点近く下がりましたが、今年は昨年よりも上がりそうです。
【理科】
大問構成と配点はこれまでと同じでした。
大問1は各分野からの小問です。計算が必要な問題も含みますが、基礎的な用語や知識を問う問題であり、半数は記号選択だったので取り組みやすかったでしょう。
大問2(地学分野)は、「気象とその変化」からの出題でした。ここ数年の出題傾向から予想した人も多かったでしょう。記述解答を求める問題が2問ありましたが、比較的答えやすい問題でした。
大問3(生物分野)は、植物(エンドウ)のつくりとはたらきや遺伝に関する出題でした。問4の遺伝子に関わる問題はやや苦戦した人がいるかもしれません。
大問4(化学分野)は、「化学変化と原子・分子」に関する問題でした。化学反応式を完成させる問題や物質(銅)の質量を計算する問題がクリアできれば高得点につながるでしょう。
大問5(物理分野)は、久しぶりに光やレンズに関する問題が出ました。作図問題も含めて、比較的答えやすい問題が多かった印象です。
平均点については、昨年と比べて大きな変動はないと見られます。
【英語】
学力検査問題の大問構成、配点などは例年とそれほど大きくは変わっていませんでした。各小問の設問内容なども特に大きな変化は見られないので、過去問等でしっかり準備してきた人は取り組みやすかったでしょう。
英作文は「本と映画ではどちらで楽しむのが好きか」についてスピーチ原稿を完成させる問題でした。身近なテーマなので書きやすかったと思われます。作文問題に限ったことではありませんが、記述問題では単語のスペルや基本的な文法事項の誤りで減点される人が多いようです。自己採点ではそのあたりを厳しめにチェックしておきましょう。
学校選択問題の大問構成や配点についても特に大きな変化はありませんでした。大問1(リスニング)のNO.7、大問2の問5、大問3の問1などの英問英答問題や、大問3の問6の長文内容の要約文を完成させる問題などが、高得点を取れるかどうかのカギとなりそうです。英作文は、「海の近くと山の近くではどちらに住みたいか」について書く問題でした。テーマとしては比較的書きやすかったのではないかと思われます。
学力検査問題、学校選択問題ともに難易度にはそれほど変化はないという印象なので、平均点も昨年、一昨年並みと予想されます。
【梅野弘之氏】
教育ジャーナリスト、元埼玉県公立高校教諭。メディアバンクス代表取締役。埼玉新聞受験特集に執筆するほか入試関連イベント、進学情報誌の編集発行に携わる。