埼玉新聞

 

プロの指導、費用は?学校との連携は? 部活動地域移行でモデル事業 上尾の中学校とVリーグ埼玉上尾

  • 部活動地域移行のモデル事業で、埼玉上尾メディックスの石原昭久さん(左から2人目)から指導を受ける原市中男子バレーボール部員たち=埼玉県上尾市立原市中学校体育館

    部活動地域移行のモデル事業で、埼玉上尾メディックスの石原昭久さん(左から2人目)から指導を受ける原市中男子バレーボール部員たち=埼玉県上尾市立原市中学校体育館

  • 部活動地域移行のモデル事業で、埼玉上尾メディックスの石原昭久さん(左から2人目)から指導を受ける原市中男子バレーボール部員たち=埼玉県上尾市立原市中学校体育館

 2023年度から段階的に始まる公立中学校の休日の部活動を民間に委ねる地域移行に向け、上尾市立原市中学校の男子バレーボール部でモデル事業が始まった。県、上尾市教育委員会、バレーVリーグ女子の埼玉上尾メディックスが連携して、本年度の3学期の週休日を使って全9回行われる。モデルケースでは、生徒たちはプロの指導者から技術を学び、バレーボールを楽しむ。その上で、地域移行の目的である顧問の教員の負担軽減を目指す。新たな試みで、実際に地域移行した場合の問題点や今後の課題などを明らかにするのが狙い。

■人材の確保

 指導者を務めるのは、上尾市に拠点を置く埼玉上尾メディックスのスカウト石原昭久さん。JTの監督時代にチームをVリーグ優勝に導いた経験を持つ。指導を受ける原市中男子バレー部の部員は1、2年生25人。

 第3回となる今月初めの日曜日、石原さんと顧問の副島朝香教諭が共に部員たちを指導していた。この日は市内の中学校バレー部と練習試合が予定されていたため、入念な準備運動やサーブ練習を繰り返した。

 「生徒たちもだいぶ慣れてきたと思う。せっかくの機会なので、できる限りのことをしたい。バレーを楽しんでもらいたい」と石原さん。副島教諭も「一緒にやりながら、いろいろ教えてもらっている。ありがたい」と話す。モデルケースでは、副島教諭ら顧問が平日の部活動の様子を伝え、スムーズに生徒たちを石原さんの指導へとつなげている。こうした顧問と指導者のコミュニケーションがうまく機能するか、連携方法などは課題だ。

■働き方改革

 地域移行は、少子化や教員の過重労働が背景にある。その対応策として、地域の人材を活用して子どもたちの活動を支え、教員の働き方改革を実現しようとしている。教師側の思いもそれぞれ。市内の中学教諭は「部活動は負担ではない。むしろ土日も指導したい」と言い、別の教諭は「そもそも未経験なのに顧問をしているのが負担。土日くらいは休みたい」と訴える。

 学校を休日に開放する際の警備体制や施設の利用なども不安要素の一つ。宮田純生校長は「地域でどれくらいの人が協力してくれるかが重要。生徒たちのモチベーションを保ちながら、地域の方と一緒に育てていけたら」と話す。「地域移行はさまざまなことを考えて試しながら、課題を一つ一つ解決していくしかない」ととらえている。

■受益者負担

 地域移行の特徴として「受益者負担」の問題も。ボランティアではないため、いわゆるコーチ料が生じる。モデルケースでは1回2時間の全9回合計で1人千円。市教委の担当者によると「破格の講師料。正式な移行となったらこの金額では難しい」という。

 「地域貢献の一環として積極的に引き受けた」と話す埼玉上尾メディックスのゼネラルマネジャー佐藤嗣朗さんは「地域に根付いたチームとして今後も協力したい。将来的には、協賛を募って受益者負担を抑える方法もあるのでは」と前向きに提案する。

 今回、初めてモデル事業を行った県スポーツ振興課では「上尾メディックスと上尾市という理想的なモデルケースが実現でき、非常に意義のある事業となった。課題を抽出し、今後に生かしたい」としている。3月末に報告会が行われる予定。

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