埼玉新聞

 

異常…襲撃の高校生、考えていたこと 猫発見の場所が物語る「欲求」 親が普段通りに子と接すべき理由

  • 猫の死骸が発見された河川敷=1日午前、さいたま市桜区大久保領家

    猫の死骸が発見された河川敷=1日午前、さいたま市桜区大久保領家

  • 猫の死骸が発見された河川敷=1日午前、さいたま市桜区大久保領家

 戸田市美女木5丁目の市立美笹中学校で男性教員(60)がナイフで襲われ負傷した事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された、さいたま市浦和区に住む高校生の少年(17)が、無差別殺人に興味があった趣旨の供述をしていることが2日、捜査関係者への取材で分かった。昼間の時間帯を狙った理由について「確実に学校がやっているため」と話していることも判明。犯行に使ったとみられるナイフを含めて、複数の刃物を所持していたという。少年は「誰でもいいから人を殺したいと思った」と供述していて、県警は強い殺意があったとみて、詳しい経緯を調べている。

■専門家が見る異常な犯行 住民戸惑い

 教員への切り付け事件で逮捕された少年(17)は、隣のさいたま市内で先月、「猫の死骸」が相次いで見つかった事件への関与をほのめかした。近隣住民は犯行の異常性に戸惑い、犯罪心理学の専門家は自己顕示欲の高さを指摘する。

 死骸が見つかったのは、美笹中学校から北西に3~8キロの範囲に位置する4カ所。2月13日に同市南区の荒川彩湖公園内にあるベンチの上に前足が、3日後の16日には付近で後ろ足と顎が欠けた死骸が見つかった。翌17日、公園から約800メートル離れた西浦和小学校の校庭で猫の顎とみられる肉片を発見。5キロ離れた同市桜区神田では26日、畑で猫の下半身らしき死骸と、付近を流れる鴨川沿いの市道で毛色や大きさが類似している上半身が見つかった。死骸は道具で切断された形跡があり、県警は動物愛護法違反の容疑で関連を調べている。

 駿河台大学(飯能市)で犯罪心理学を専門とする小俣謙二教授は逮捕された少年について「(死骸の事件にも関与していたならば)素行障害など、何かしらの人格の問題を抱えている可能性がある。家庭環境や生育歴などを正確に調べた上で対応を考える必要がある」とし、死骸がいずれも人目につきやすい場所で見つかった点に関し「自分の存在を他者に示したいという気持ちが表れている」と自己顕示欲の高さを指摘する。

 一連の事件に対する近隣住民の反応は複雑だ。美笹中学校の卒業生の男性(15)は「自宅の近くばかりで起きていたので物騒だなと思っていた。犯人が捕まって安心したが、母校の先生が被害に遭ったのは心配だ」と案じる。同校生徒の保護者の40代女性は「猫を傷つけることがエスカレートしてしまったのか。この事件が子どもたちに悪影響を与えて連鎖しないように大人がケアしなくてはならない」と語った。

 中学校生徒らの心のケアについて、小俣教授は保護者が過度に神経質になると子どもが不安になるとして「心配になる気持ちも分かるが、できるだけいつもと変わらない接し方をするのが大切」とした。

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