悲劇拡大、不思議でない…言葉巧みな詐欺師、固定電話へ9割かける 埼玉の警察署、独自の留守電強化策とは
埼玉県内外で年々被害が拡大している特殊詐欺。県警が昨年1年間で認知した被害は一昨年より305件増加し、1387件に上った。各署が被害防止などの呼びかけに力を入れる中、越谷署では昨年から、管内の地域住民に対して固定電話の留守番機能設定を促した上で正しい設定ができているか確認する独自の対策を展開し、被害件数の抑止を目指している。
「自宅の電話、留守番に設定していますか?」。同署では1月中旬、事務職員が運転免許更新のために来署した管内の高齢者らに立て続けに声をかけていた。
署独自で行っている「特殊詐欺防犯診断プログラム」は、回答者の自宅にある固定電話の状況について「はい」か「いいえ」の二者択一で回答することで、詐欺被害に関する危険度を可視化できるもの。診断によって留守番機能を設定していないことが判明した回答者には、帰宅後の設定を促すだけでなく、後日同署から実際に電話をかけて、留守番設定が正しく行われていることと、留守番機能が作動する前に受話器を上げないことの2点を確認する。
同署では昨年4月からこのプログラムを始め、1月末時点で架電した件数は2千件を超えた。そのうち、正しい設定が行われていたのは全体の45%に当たる921件。残りについては、期間を空けてもう一度架電することで着実な設定を目指している。
実際に診断を受けた男性(83)は、過去に2度にわたって詐欺と思われる電話を受けたという。当時は被害にこそ遭わなかったものの、電話の留守番設定をしておらず「言葉巧みに話されるので、だまされてしまう人がいるのも不思議ではない」とした上で「設定を呼びかけるだけでなく、実際に確認してくれるのはありがたい」と話した。
県警特殊詐欺総合対策本部によると、特殊詐欺事件は住宅に設置された固定電話などへの入電がきっかけとなるケースが9割を占めるという。県警では犯人からの電話に出ないようにするため、在宅中であっても電話を留守設定にすることを呼びかけているが、被害はなかなか減らない。
同署でもその傾向は変わらず、昨年1年間の被害認知件数は一昨年比22件増の87件。県内全39署中で3番目に多かった。プログラムを考案した同署の丸山精一郎副署長は「呼びかけなどの啓発では実際の効果を測定することが難しい」と指摘し、一歩踏み込んだ対策の必要性を訴える。「今はまだ始まったばかり。これから少しずつ実績を積み重ねて、地道でも確実に一件でも被害をなくしたい」