「中学校生活を返して」 1年時からいじめ…解決せず、きょう卒業式 蓮田の中学校、校長異動で記録紛失も
埼玉県蓮田市の市立中学校で2020年、女子生徒が同じ学級の複数の生徒から何度もいじめを受け、約2年にわたり登校できない状態が続いていることが14日、市教委への取材で分かった。この問題について作成した記録を校長が21年に紛失していたことも判明。当時1年生だった女子生徒は、問題が解決しないまま15日の卒業式を迎える。女子生徒は埼玉新聞の取材に対し「中学校生活を返してほしい」と訴えている。
■2年間不登校、記録紛失も
市教委によると、女子生徒は1年生の1学期以降、複数の生徒から「うざい、きもい」と言われたり、足を蹴られたり、黒板に落書きされるなどのいじめを受けた。
教室に入れなくなった女子生徒は21年1月、医療機関からいじめを原因とする起立性調節障害の診断を受けた。女子生徒の保護者からの指摘を受け、同2月、学校が市教委に報告。学校と市教委が対応したが、いじめは解消されなかった。女子生徒は中学校内の相談室に通い始めたが、同4月から不登校に。その後はフリースクールに通った。
いじめ防止対策推進法に基づき市が設置する「いじめ問題専門委員会」で、女子生徒の問題が「重大事態」として報告されたのは22年3月。県教委や警察からの指摘もあったという。
その後の市教委による調査で、21年春に学校長が代わり、引き継ぎの際、女子生徒の問題について作成した紙媒体の記録が紛失していたことも分かった。内容は不明としている。
委員会のメンバーは全て市や市内学校関係者で構成され、同5月と11月に女子生徒のいじめについて協議したものの、問題の解決には至らなかった。今後の開催は未定。
取材に応じた女子生徒と保護者は、約2年にわたり学校側が被害者と加害者の双方に責任があったという認識で問題解決には消極的だったと主張。保護者は「学校と市教委はいいかげんな報告だけを共有し、いじめの問題に正面から取り組まなかった。いじめの事実についてはいつも濁し、誤りを認めない。許せない」と憤る。
学校側の報告や重大事態と認定するまでに長期間を要した理由について、市教委は「アンケートを実施したり、学校側で解決に向けて動いていた」と説明。女子生徒への卒業後の対応に関しては「長期間学校に来られず、学習に不安を抱えている。学習支援を継続していきたい」としている。
いじめ事案で被害児童生徒や保護者の支援に当たる埼玉弁護士会の森田智博弁護士は、教育委員会でいじめに対応する指導主事が少ないなど構造的な理由から、いじめ問題が卒業まで解決しない事例が多くあると指摘。蓮田の事例について「いじめ対応が長期化する理由はさまざま。長期化の原因および再発防止についてしっかりと調査してもらいたい」とコメントした。