後輩たちへ「置き土産」 さいたま大谷場中、生徒手帳に「子どもの権利条約」掲載へ 3年生3人の活動が結実
埼玉県さいたま市立大谷場中学校の生徒手帳に、子どもの権利条約が新年度から掲載される。卒業生3人の活動が実を結び、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」の内容を盛り込むことが決まった。3人は「新しく入学する後輩たちに、ぜひ読んでほしい」「大人も子どもも、多くの人に条約を知ってほしい」と話している。
■学年ごとにプレゼン
今川つかささん、伊藤菜穂さん、林小桜(こはる)さんの3人は昨年3月、条約を生徒手帳に掲載するよう求め、市教育委員会の細田真由美教育長に提言書を手渡した。細田教育長は3人の行動を評価した上で、「生徒たちが議論をして、生徒手帳の掲載内容を決めるべき」と回答した。
3年生に進学した3人は、各クラスで、条約の内容を説明した。賛同する意見ばかりではなく、「必要性を感じない」と反対意見も出たという。林さんは「条約の内容が伝わっていなかった。しっかり説明をしないと、載せる意味がないと感じた」と振り返る。
3人は学年ごとにプレゼンすることにした。生徒会役員らの協力を得て、放課後に資料を作成するなどして準備した。伊藤さんは「条約が身近に感じられるように、大切さをどのように伝えるかを意識」しながらプレゼンした。
■生徒総会で掲載可決
生徒手帳への掲載を協議する生徒総会は昨年6月17日、オンラインで開かれた。反対するクラスは出たものの、賛成多数で可決された。新年度の生徒手帳に、日本ユニセフ協会のホームページから引用した内容を掲載する。
今川さんは「条約を多くの人に知ってほしかったので、決まった時は率直にうれしかった。反対されたのは悔しかったけれど、みんなが考えてくれて記憶に残ったと思う」と話した。卒業生の3人は高校に進学するため、掲載された生徒手帳を受け取ることはできない。「後輩の人たちに、ぜひ読んでほしい。私たちも機会があれば、見てみたい」
■参加する権利の意義
3人は教育長への提言で、コロナ禍による児童虐待が増加している恐れがあると指摘し、「条約を知っていたら、防げたものもあるのではと考えた」と訴えていた。今川さんは「ヤングケアラーや親から暴力を受けている人がいたら、その人たちの助けになればいいなと思う」と語る。
3人は条約の「参加する権利」を駆使して、生徒手帳への掲載を実現した。伊藤さんは「私たちの意見で社会を変えることができると強く感じた」、林さんは「子どもでもアクションを起こせると知ってほしい」と意義を強調した。
子どもの権利条約は1989年に国連で採択され、日本は94年に批准した。東京都世田谷区は小学6年生の提案をきっかけに、2019年4月から母子手帳に条約の内容を掲載している。世田谷区の話を聞いた今川さんが、2人を誘って活動を続けていた。3人は「大人にも知ってほしいので、母子手帳への掲載を求める活動もしていきたい」「進学する高校でも掲載できるようにしたい」と話していた。