埼玉新聞

 

<熊谷6人殺害>私を殺せば全員天国…ナカダ被告が発言「謝罪なぜ」 妻子殺された夫「生きた心地しない」

  • 多くのパトカーが集まり騒然とする事件現場=2015年9月16日午後6時半ごろ、熊谷市石原

 熊谷市で2015年9月、小学生姉妹ら男女6人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われ、一審さいたま地裁で死刑判決を言い渡されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(33)の控訴審第2回公判が1日、東京高裁(大熊一之裁判長)で開かれた。ナカダ被告の訴訟能力の有無について調べる被告人質問が行われ、被告は「私を殺せばいい」などと供述する一方で、事件とは無関係の発言や質問とかみ合わない回答を繰り返した。

 黒っぽいジャージー姿で出廷したナカダ被告は、意味不明の独り言を話しながら、証言台の前のいすにもたれるようにして着席。周りを5人の男性刑務官が取り囲むようにして座った。

 弁護側の質問には「地獄に住んでいる」「日本は病気だ」などと回答し、外国の人物の名前を連呼するなどした。

 質問とかみ合わない回答を繰り返す一方で、検察官から出廷した理由を聞かれると「連れて来られた」と発言。死刑判決については「私は身体的ダメージだけでなく精神的ダメージも受けている。私がやることについて私は責任を持てない」などと話した。

 被害者遺族の代理人高橋正人弁護士が、改めて謝罪の意思について問うと、「どうしてですか。日本が謝らなければならないです」と話し、謝罪の意思を示すことはなかった。

 終始落ち着きがなく、素足を前に投げ出し、つぶやくように応答したナカダ被告。最後に裁判官から「死刑判決を見直すかを検討する手続きが行われていることを理解しているか」と問われると、「もし私が6人殺しているなら、私を殺せばいいんじゃないですか。そうすれば家族が全員天国に行ける」と供述した。

■「事実知れず残念」被害者参加の遺族男性

 熊谷6人殺害事件で妻子を奪われた男性(46)は、一審さいたま地裁の審理から被害者参加制度を利用して公判に参加している。むなしさと怒りを抱えながら控訴審の審理を見つめた。裁判終了後、ナカダ被告の様子について「一審より会話ができているようだった。責任能力があると感じた」と話した。

 男性は事件で、妻の加藤美和子さん(41)、小学5年の長女美咲さん(10)、小学2年の次女春花さん(7)=年齢はいずれも当時=を亡くした。

 どんな気持ちで命を奪ったのか、妻と娘は最後に何か言っていたか―。男性が知りたかった真実を知ることはできず、「残念でならない」と悔しさをにじませる。

 来月で事件から4年が経過する。事件からの月日を「家族のために生きていたんだなと思う。いまだに生きた心地がしない」と話し、裁判所を後にした。

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