セブンイレブン移動販売スタート、埼玉山間部で 店消えた街に笑顔 社協も連携、販売に同行する世話人とは
越生町社会福祉協議会は昨年10月から、セブンイレブン毛呂山埼玉医大南店と共同で、移動販売車による買い物支援事業を始めた。中山間地が広がる町西部には商店がなく、人口減少と高齢化が進む。生活の足である自動車を運転しなくなった住民が、買い物難民となることが懸念されていた。町社協は移動販売に立ち会う世話人を選定。住民に気がかりがあれば知らせてもらい、支援できる体制も整えた。販売車の訪問先は、交流の場にもなっている。
越生町黒山のバス停。軽トラックを改造した移動販売車が到着すると、周辺集落で暮らす人々が顔をそろえた。客たちは、店員と言葉を交わしながら品定め。近隣住民同士の会話が弾み、時折笑い声が起こる。よく利用するという嶋田恵美子さん(71)は「近所の人と会え、互いに近況報告もできる。販売車が来てくれてありがたい」と喜ぶ。
■商店が消えた山間部
2月1日現在、越生町の人口は1万1040人。町社協によると、小杉地区より奥にある山側の行政区内には商店が1軒もないという。黒山地区に住み、移動販売を楽しみに待つ高齢男性は「昔はリヤカーを引いて物を売りに来る人がいたし、近所に食料品などを買える店も何軒かあったけれど」と回想する。現在、住民の多くは町中心部や隣の毛呂山町にあるスーパーまで、車で20分ほどかけて買い出しに行っているという。
昨年4月、事業所や過疎地で移動販売を展開する毛呂山埼玉医大南店から、実施の提案が町に寄せられた。買い物代行など地域支え合いサービス事業を行っている町社協が、受け入れの検討を開始。社協で生活支援コーディネーターを務める中下奈江さん(29)は「買い物難民の存在が課題だった。移動販売車が来る場所にお年寄りが集まれば、高齢者サロンの代わりにもなる」と言う。町の最も奥にある黒山、麦原地区で、スタートすることになった。
■セーフティーネット
90人がいる麦原地区は65歳以上の高齢化率が50%で、263人が暮らす黒山地区は42・2%。町社協は民生委員や区長など、地域住民からボランティアの世話人計10人を選び、両行政区内の7カ所で原則月2回行われる移動販売に立ち会ってもらっている。黒山区で世話人をしている正木利男さん(66)は「顔を合わせれば、日頃の苦労なども聞ける。気付いたことがあったら、すぐ対処してもらえるよう社協に伝えたい」と話す。
コロナ下で外出の機会が減った高齢者にとっては、社会とつながるセーフティーネットの意味も持つ。同店マネジャーの富田章子さん(52)は「商品を選ぶ楽しみを提供できるように工夫している。社協と協力しながら、少しでも課題解決の役に立てれば」と期待。中下さんは「息長く続ける取り組みにして、今後はほかの行政区にも広げていきたい」と話している。