生活保護、引き下げ「取り消し」命令 さいたま地裁が判決「裁量逸脱か濫用」 問題となった“ゆがみ調整”
2023/03/30/15:35
生活保護費の基準額が引き下げられたのは憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害するとして、埼玉県内に住む生活保護受給者25人が国や県などを相手取り、引き下げ処分取り下げや国家賠償を求めた訴訟の判決が22日、さいたま地裁(倉沢守春裁判長)であった。倉沢裁判長は生活保護支給額の引き下げ処分について、一部原告を除いて取り消すよう命じた一方、国家賠償については棄却した。
訴状などによると、生活保護基準の引き下げは、物価の変動に合わせて生活扶助基準を改定する「デフレ調整」と生活扶助基準による指数と一般低所得世帯の消費実態指数の差を修正した「ゆがみ調整」を基に行ったが、いずれの調整も違法に行われており、引き下げを取り消すよう求めていた。
生活保護支給額は2013~15年、3回にわたり平均6・5%、最大で10%の引き下げが行われた。
判決理由で倉沢裁判長は、ゆがみ調整については格差を是正するというゆがみ調整の趣旨と相いれない面があると指摘。この処理を行った具体的な理由も示されておらず、「厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱か濫用に当たる」と述べた。一方、デフレ調整の手法は一般的な統計学の方法に沿ったもので「妥当な処理と評価できる」などとした。
同様の訴訟は全国29地裁で提訴され、引き下げ取消を認めた判決は、さいたま地裁での判決で8例目。各地の訴訟は二審でも争われており、4月には大阪高裁で判決が出る予定となっている。