保津川の転覆死亡…埼玉名物「長瀞ライン下り」改めて確認徹底、船頭は客と違う救命胴衣「同じだと熱中症」
京都府亀岡市の桂川(通称保津川)で観光客向け川下りの舟1隻が転覆し船頭が死亡した事故を受け、荒川を和船で下る長瀞町の観光名物「長瀞ライン下り」を運営している事業者は、増水時に運航を取りやめるなど改めて安全運航の確認をした。3月から今シーズンの運航が始まっており、事業者は「水位や風速を小まめに確認し、安全対策を徹底したい」と話している。
長瀞町の荒川岩畳周辺で運航している「長瀞ライン下り」は、乗客全員に救命胴衣の着用を義務付けている。運営会社の秩父鉄道観光事業課杉山章さん(59)は「(2011年8月に浜松市で起きた)天竜川の転覆事故以降、町内の川下り業者は管理規程を統一し、乗客に安全への協力を呼びかけている」と説明する。
28日に起きた京都府亀岡市の保津川下り転覆事故は、乗客は全員一命を取りとめたが、船頭は4人中2人が死亡した。杉山さんは「船頭はかじ取りを担うため、一般の上半身型の救命胴衣とは違い、胴体部に巻き付けるタイプを使用することが多い。乗客用と比べて浮力が弱く、大きい波にもまれてると機能しないこともある」と話す。
長瀞ライン下りの乗客定数は20人で船頭は2人。コロナ禍以降、3キロコースのみで運航している。運航条件は水深125センチ以上で上限2メートル、風速10メートル以上は中止させる。船頭は、国の安全基準を満たした上で、腰巻タイプの救命胴衣を着用している。
杉山さんは「船頭は大きい動作が必要なので、乗客と同じ救命胴衣では、夏場は特に熱中症にかかってしまう心配がある」と懸念する。同社では、国の基準が変わらない限り、船頭用の救命胴衣の種類を変えるつもりはないという。
水場の事故を防ぐため、長瀞ライン下りなど町内川下り業者3社は年に1度、合同訓練を実施。船が浅瀬に乗り上げた時などに備え、救助者要請の手順や緊急通報の連携などを確認している。同3社は過去に横転事故を起こしていない。
岩畳付近の乗船場で川下りの順番待ちをしていた羽生市の60代男性は、「事故のニュースを聞いて少し不安になったが、惨事を繰り返さないために、長瀞の船頭の方もより気を引き締めて運航してくれると思う」と話していた。