戸田ボートコースの守り人、造形作品を市に寄贈 カヌーやオールのミニチュア「心込め作った」
長年にわたり東京海上チームの艇庫で管理人を務め戸田ボートコースの「主(ぬし)」の一人で戸田市上戸田の別府克己さん(89)が妻のヒロ子さん(88)とともに同市の菅原文仁市長を訪れ、別府さんが制作した造形作品を市に寄贈した。戸田ボートコースに艇庫がある22大学や5つの企業チームにカヌーなどのオールのミニチュアで構成。直径1・7メートルの立派な作品だ。
「1本1本、仏像を作るのと同じ、心を込めて大事に作った」と別府さん。「家で作り始めると一心不乱。口もきかないでやっている」とヒロ子さんが言葉を添えた。
別府さんは1929年、東京・亀戸の生まれ。戦争末期から戦後にかけ、15歳のころから隅田川べりの造船会社で働いた。木造船の腕を買われ54年、25歳のころに隅田川べりの向島にあった東京海上関連の艇庫の管理人に迎えられ、ボートの製造や修理を担当した。
40歳の時に艇庫が戸田ボートコースの水辺に移転し、それから50年間、ボートは木造船からプラスチック製に変わったが、戸田のボートマンたちを支えてきた。14年、85歳の時に引退し、その後は三菱グループの艇庫にボランティアで通い、ボートの修理などをしている。
こうした仕事の傍ら、オールのミニチュアを作り、市などに寄贈してきた。JR戸田公園駅や県ボート連盟の事務所など、これまでに寄贈した作品は16基になった。
「今度のは今までのとは違う。同じものを作っていては職人としてだめだからね。こんどはパラボラアンテナのように立体的にした。埼京線から見える戸田スポーツセンターに飾ってほしいと思って作ったんです」と別府さん。
菅原市長は「素晴らしい作品をありがとうございます。別府さんは戸田ボートコースの守り人。ボートマンたちから慕われていて、ボートの街戸田を盛り上げている大切な人。いつまでもお元気でいてください」と感謝の言葉を述べた。