「舞台裏」の魅力とやりがい実感…世界フィギュア会場で高校生向けセミナー プロによる「プロの仕事」学ぶ
世界フィギュアスケート選手権大会の準備や設営などを見学し、スポーツやエンターテインメントに関する仕事について学ぶイベント「埼玉スポーツ&アート・マネジメント・セミナー」が、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催され、県内の高校生71人が参加した。同イベントは、会場となった同アリーナが日本スケート連盟の協力の下で高校生を対象に初めて開いた。
さいたまアリーナ常務取締役総務部長の佐藤卓史さん(56)は開始に当たり、「プロの方々がプロの仕事をすることで一つイベントが成り立っている。きっと将来にも結び付くと思いますので、さまざまな仕事を体験・体感していってください」と述べた。参加者は四つのグループに分かれ、大会準備が進む会場内でイベントを支える企業の話を聞いて回った。
会場装飾を担当するムラヤマは、メインビジュアルについて「ジャンプ、スピン、ステップをモチーフにし、エレガントさと力強さをイメージしている」と解説。会場内は選手のモチベーションを上げると共に、来場者のテンションも引き上げることを狙って没入感のある空間となるようデザイン設計したという。参加者からの「どうしたアイデアが出てくるのか」という質問には、「新しいものを見るなどインプットが大事」などと答え、「日々興味のあることを探してみてほしい」と話した。
得点システムを担当するコムネットでは、参加者が得点の入力を行う審査員体験を実施。本番で使用するパソコンを使って9人が入力した点数が即座に集計され、会場内の巨大スクリーンに表示されると感嘆の声が漏れた。
リンクの設営を担当するパティネレジャーでは、2週間にわたり24時間動かし続けて作る氷やリンクについて解説。リンクの氷の厚さは約6センチで、これはジャンプして安全であると同時に、終了後に溶かして排水することを踏まえて、片付けがスムーズに行えるように考えられているという。機械による作業を間近で見た後は、実際に氷の上に乗る体験。参加者は、滑らないように転ばないようにと慎重に歩いていた。
選手や関係者の移動・宿泊を担当するJTBでは、選手や関係者ら40カ国約千人の宿泊や食事を手配しているという。参加者からの「大切にしていることは」という問いに、「どんな気持ちで旅に参加しているのかを大切にしている」と答え、「また日本やさいたまに来てくれるようなおもてなしを目指している」と熱弁した。
警備などを担当するシミズオクトは「けがをしないように、事故に遭わないようにする仕事。事故が起きなくて当たり前」と説明。参加者はメモを取りながら真剣な様子で聞き入っていた。
部活の先輩に勧められて加須市から参加したという境沢美優さん(18)は、高校の放送部で文化祭などのイベントのリモート配信などに携わった経験から、イベントの仕事に興味を持ったという。審査員体験では「選手たちがアピールする審査員席に座れたり、得点が表示されるのを見て感動した」と語り、自身のイベント裏方体験も踏まえて、警備を手掛けるシミズオクトの「『裏方一筋』という言葉や仕事への思いがすごいな、かっこいいなと思った」と目を輝かせた。
今回の同選手権大会は4年ぶりの開催で、1年以上前から準備が進められた。