埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(3)】大宮鍍金工業・出野哲也社長、障害者も若手も戦力
埼玉県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。
■大宮鍍金工業(北区)出野哲也社長
カシャカシャと金属が重なり合う甲高い音が工場内に響き渡る。数ミリから1メートル以上までさまざまな形の金属部品が機械で運ばれていく。「彼らは技能実習生、あちらは障害のある方です」。いずれも出野哲也社長(53)が「貴重な戦力。不可欠な人材」と評する従業員たちだ。
大宮鍍金工業は地元で約70年続くメッキ業。さび止めの亜鉛メッキを中心に多種多様な部品の表面処理加工を手がける。主な扱いは自動車部品。国内大手メーカーのドアやシート回りに使われている。
障害者雇用は1988年から実施。現在は10人を雇っている。うち6人は20年以上勤め、社長の入社前から34年在籍する人もいる。障害者雇用促進法に基づく企業の法定雇用率は従業員の2・3%。同社の実雇用率は約22%と極めて高い割合を誇る。
主に任せるのは加工処理器具への部品の取り付け。その方法は何十種類もあるが、「彼らは慣れると全部覚える。うまくうちの仕事と合った」。同じく数年前から技能実習も受け入れ、現在はベトナムとタイ国籍の10人が働く。
多様な人材の雇用とともに取り組んだのは、社員が技術を習得しやすい環境づくり。以前は若手の離職が多く、なかなか定着しなかった。「単純な作業だけではつまらない。職場に魅力を感じない」。そのため入社後数カ月で機械や薬品の管理を任せ、やりがいを持ってもらうよう努めた。
単にメッキといっても金銀銅から亜鉛、クロムなど種類は豊富で、通電性を高めたり、硬さや色味を出したり、あらゆる用途に使われる。素材を生かすメッキ処理と、人材育成を重視する社長の言葉が重なる。「人をどういうふうに生かすか。従業員と一緒に会社を成長させていきたい」