埼玉新聞

 

<豚コレラ>目に見えないもの県内に「広がるのは時間の問題」 売り上げ、生活…養豚農家、不安訴え

  • 豚コレラに感染した豚が飼育されていた養豚場で行われる防疫作業=14日午前、秩父市(県提供)

 秩父市の養豚場で豚コレラの感染が確認されたことを受け、県は13日夜から豚の殺処分を始め、14日中にこの養豚場で飼育されていた豚753頭を全て殺処分する方針。県内の養豚農家は「生活が懸かっていて不安」と訴え、養豚場直売所は「安全性をPRしたい」と話した。

 豚コレラの陽性反応が出たのは、秩父市下吉田の養豚場で、養豚場に程近い同市下吉田の市吉田取方総合運動公園体育館では14日午前10時、県職員などの関係者約40人が集まった。職員らは作業内容などの説明を聞いた後、白い防護服に着替え、やや緊張した様子でバスに乗り込んで養豚場へ向かった。

 養豚場に向かう直前には、久喜邦康市長も駆け付け、職員らを激励した。久喜市長は「地域の安心安全や、日本全国に被害が広がらないために業務を完遂してほしい。暑い中での作業なので、体調にも気を付けてもらえれば」と話していた。

 豚コレラ感染に県内の養豚農家は不安を訴えている。寄居町で養豚場を営む60代女性は「昨日夕方のニュースで見てから、不安でしょうがない。今も神経がピリピリしている」。ニュースで流れてから携帯電話が鳴り続け、昨夜はとても混乱した状況だったという。創業56年目を迎え、現在は約3千頭を飼育する。「県内に入ったら広がるのは時間の問題。目に見えないものなので、どうすることもできない。一刻も早く国や県で対応してほしい」と話した。

 所沢市で約50年前から養豚業を営む70代の男性は「ワクチンを打てるようにしないと、被害が広がるばかり」と心配する。昨日、夕方のニュース速報で知り、すぐに川越家畜保健衛生所から連絡があったという。「25歳で創業してから、今までこんなことはなかった。われわれの生活も懸かっているし不安」と話す。

 精肉や加工品など約30種類を扱う深谷市の養豚場直売所の20代の男性店長は「今は推移を見守りたい」と話した。14日の営業で特に変わったことはなかったが、昨年9月に岐阜県で見つかった時は客から商品の安全性などで聞かれることが多かったという。「深谷から秩父も近いので、これからの売り上げなど考えると不安。人体に影響はないなど、店頭に張り紙をして安全性をPRしたい」と語った。

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