<スポーツのまちづくり4>面白いものを作り、接客も良く 運営だけでなく「楽しい」エッセンスを
今回のツール・ド・フランス視察ではレースの最終ステージで、選手たちがシャンゼリゼ通りの周回コースを回り、凱旋(がいせん)門を折り返してフィニッシュするシーンにも立ち会った。
最終日はスプリントの優勝者を決めるレースを実施するが、もう総合優勝は決まっており、パレード走行の色合いが濃い。
総合優勝したコロンビア人選手は、最後はグラスを片手にシャンパンを飲みながら走っていた。周囲もすごく盛り上がり、その姿を映し出す大型モニターを眺めていると自分も楽しい気持ちになる。会場に詰めかけた観客の多くがシャンパンを飲んでいた。
最終日はレース前の午前中、シャンゼリゼ通りで一般走行も行われる。事前に申し込んだ市民が自分の自転車を持ち込んでぐるぐる走る。シティサイクル、俗に言うママチャリの人もいて全速力で走ったり、これも非常に盛り上がる。普段は凱旋門の目抜き通りを自転車で思い切り飛ばしたりできないので。
本物を見ると、なぜツール・ド・フランスが人気なのか分かる気がする。前回も話したが、この大会はフランスの美しい景色を見せる旅番組。クリテリウムでもさいたま市の魅力、面白いものを見せていけば地域密着は広がるはず。旅番組なら接点として広い。
ツール・ド・フランスを主催しているASO(アモリ・スポル・オルガニザシオン)にも言えることだが、彼らは国民を「楽しませたい」と思っている。選手がシャンパンを飲みながら走るのもその発想だし、市民に自転車でシャンゼリゼ通りを走らせるのも同じだ。
さいたまクリテリウムも「運営する」だけでなく、「楽しい」というエッセンスを私なりに付け加えたいと考えている。
横浜ベイスターズも元は「競技運営部」という名称だったのを「エンターテインメント部」と「ホスピタリティー部」に変えた。面白いものを作り、接客も良くしようというわけだ。
「楽しませたい」は民間の発想。SSCも民間会社になったが、まだ始まったばかりの組織だ。民間の人間が入り、ツール・ド・フランスというビジョンに向かって大胆に変えられるかがどうか。
クリテリウムを始めた市長の任期は今年を入れて3年。その期間で大きく進化させられるかは、行政との連携の成就が必須。来年はクリテリウムを変えていかなければならないと考えている。そのカギはやはり旅番組になる。
■池田純(いけだ・じゅん)
1976年横浜市生まれ。早大卒。住友商事、博報堂を経て2011年、株式会社横浜DeNAベイスターズの初代社長。観客動員数、売り上げ拡大に実績を挙げた。日本プロサッカーリーグアドバイザー、大戸屋ホールディングスなど企業の社外取締役なども務める。